ボーダーフリー
(Fランク から転送)
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ボーダーフリー (和製英語:border free)とは受験用語の一つであり、合格見込みが50%となる偏差値(いわゆるボーダーライン)を算出できない状態を指す。Fランクとも。そのような大学はボーダーフリー大学やFランク大学と呼ばれる。
ボーダーフリーおよびFランクは、もともと河合塾の用語であり、2000年以降に使用されるようになった[1]。
なおFランク大学という言葉は俗に、入学難易度が低い大学を指すものとして、より広義かつ曖昧に用いられることがある[2]。
ボーダーフリー
予備校の河合塾は、各大学の一般入試において、合格者と不合格者の割合が50%ずつになる模試の偏差値帯(ボーダー偏差値)を算出・設定し、16区分に分類した難易予想ランキング表[注 1]を作成しているが、そのなかでボーダー偏差値を算出できない状態を「ボーダーフリー(略称BF)」と呼ぶ[3][4]。
河合塾の計算方法では、どの偏差値帯でも合格率が50%を大きく上回る場合には大学偏差値(ボーダー偏差値)を算出できないため、この区分を設ける必要がある[5]。ボーダーフリーはデータから算出できないという意味であり、必ずしも数字で表せる最低ランクより下という意味ではない[6]。
用語の誕生
河合塾は毎年、大学の学科や入試方式ごとに、合格率が50%となる模試の偏差値(ボーダー偏差値)を公表している。河合塾は2000年に、その入試難易予想ランキング表[注 2]にFランクを追加した。というのも前年の入試で、すべての偏差値帯で合格率が50%を大きく上回る学科が多発し、そうした学科ではボーダー偏差値を算出できない事態になったためである[5]。背景には、少子化や大学数の増加により、入試競争倍率が1倍台にとどまる大学が増え、定員割れも見られるようになったことがある[7]。
FランクのFはフリーの略である[8][9][10]。Fランクという呼称はフリーパスのような印象が強く大学側の反発もあったため、河合塾は2001年までにFランクをボーダーフリー(BF)に改称した[11][1][注 3]。
河合塾の用語とは異なるが、Fランク大学という表現は、「誰でも入学できる大学」や「偏差値が低い大学」といった漠然とした意味で使われることがある[2]。
用語が普及した背景
ボーダーフリーやFランクの概念が普及した背景には、少子化による18歳人口の減少と、大学の定員割れがある。
1990年の大学進学率は24.6%であったが、2007年時点で大学進学率は47.2%と約2倍となった[12]。しかし逆に大学の定員割れは増加している。 定員割れの学部をもつ私大の割合は、1994年時点で5%未満だったのが、2003年度には28.2%と急増している[1]。その後、私大の定員割れは2014年に45.8%[2]、2023年に53.3%に増えている[13]。
更には、日本では2009年以降から大学全入時代(大学進学希望者を入学定員総数が上回る時代)に突入したが、このままの少子化(出生数減)が続くと受験生自体が減っていくため、大学進学率が2023年度と同値のままだとしても2042年度にはMARCHが日東駒専レベルへ、日東駒専は大東亜帝国レベル・Fランク大学枠に、そして大東亜帝国は「受験生が消滅」となる試算が出ている[14]。
海外の類似表現
海外にも類語が存在し、アメリカ合衆国やイギリスでは無価値と見なされている講義や学位を「ミッキーマウス学位(英語:Mickey Mouse degrees)」と呼ぶことがある。ミッキーマウスは英語の俗語的な形容詞として、重要でない、取るに足りない、〔科目・講座などが〕単位の取りやすい、〔学校の宿題や課題〕簡単な、などの意味がある[15]。
カナダでは、鳥コース(bird courses)が「ほとんど勉強や知的能力を必要としない」講義を指す[16]。
韓国では、Fランと似たような表現に「地方にある雑多な大学」(韓国語:지방소재의 잡다한 대학(地方所在의 雜多한 大學) 、略称として지잡대(地雜大)と呼ばれる[17]。
中国では、もともと偽物の学歴を売る詐欺こと「ニセ大学」を表す言葉「野鶏大学」があって、語源は英語のディプロマミルから来ている。転じて「本物の大学だが、卒業しても意味がない大学」も「野鶏大学」を呼ぶ傾向が近年には増えている[18]。また、「楽単」や「何もしなくても単位を取れる授業」のことを「水課」と言い、「楽で卒業できる修士(硕士)、博士」は「水硕」「水博」と言うなど、「質が低い、ハードルがない」ことを「水」を付ける造語で言うことが多い[19]。
脚注
注釈
- ^ 2025年時点では偏差値35から72.5まで2.5刻みの16段階で表示される。河合塾が独自に実施する「全統模試」の偏差値を基準としている。
- ^ 2000年当時、偏差値32.5から70まで2.5刻みの16段階。
- ^ 大学側の反発の例として、学長を務めていた大学がFランクに指定された山口昌男は、2000年10月に刊行した著書『独断的大学論』(第1章)で、河合塾に対し「思い上がるな、寄生虫」と非難した。
出典
- ^ a b c “受ければ受かる「Fランク」大学、激減なぜ?”. 週刊朝日2004年3月26日号. 2004年4月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年8月24日閲覧。
- ^ a b c “Fランク大学が都市部で消滅へ~激戦の大学受験事情とは(石渡嶺司) - 個人”. Yahoo!ニュース. 2022年8月30日閲覧。
- ^ “入試難易予想ランキング表 | 志望校をさがす | 河合塾 Kei-Net”. www.keinet.ne.jp. 2022年1月15日閲覧。
- ^ “バカでも入れる? 偏差値35未満「Fラン大学」が定員割れの進む「大学全入時代」に増えた実態と今後”. [大学受験] All About. 2022年7月1日閲覧。
- ^ a b 『週刊朝日』2000年6月23日号、p145-147
- ^ “全国のほとんどの大学がボーダーフリー(BF)になるって…近未来、全入時代の受験地図”. 産経新聞 (2025年1月29日). 2025年8月24日閲覧。
- ^ 山口昌男『独断的大学論: 面白くなければ大学ではない』ジーオー企画出版、2000年、p13
- ^ 『毎日新聞』2000年6月24日、東京朝刊、p4
- ^ 『日本経済新聞』2001年1月1日、朝刊、p10
- ^ 『読売新聞』2002年4月24日、中部朝刊、p34
- ^ 『日本経済新聞』2001年5月31日、朝刊、p38
- ^ https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/11-3/dl/06.pdf
- ^ “定員割れの私立大53.3%…過去最多を更新”. リセマム. 2023年8月31日閲覧。
- ^ “出生数減の日本…。18年後、MARCHは日東駒専レベルに?日東駒専がFラン大になり大東亜帝国は消える [大学受験 All About]”. All About(オールアバウト). 2024年5月23日閲覧。
- ^ “英辞郎 on the WEB”. eow.alc.co.jp. 2022年1月15日閲覧。 “〈米俗〉重要でない、ささいな、取るに足りない〈米俗〉〔科目・講座などが〕単位の取りやすい、〔学校の宿題や課題〕簡単な”
- ^ Barber, Katherine (2008). Only in Canada, You Say. Don Mills, Canada: Oxford University Press. p. 215. ISBN 978-0-19-542984-8.
- ^ “韓国のFランに通う学生がかえって幸福な理由”. ライブドアニュース. 2023年8月31日閲覧。
- ^ 峰俊, 安田. “その数400校! 中国で「ニセ大学」による入試詐欺が増えている理由”. 文春オンライン. 2024年3月14日閲覧。
- ^ “【ニュース・中国】教育部:本科教育を全力指導!専門家:根源の改革が先 | JSPS海外学術動向ポータルサイト”. 2024年3月14日閲覧。
関連項目
Fランク
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「モンスターファーム2」の記事における「Fランク」の解説
F(フリー)ランク。グレードに関係なしに出場できる。出場する大会によって敵モンスターの強さはE級からS級まで大きく変わる。
※この「Fランク」の解説は、「モンスターファーム2」の解説の一部です。
「Fランク」を含む「モンスターファーム2」の記事については、「モンスターファーム2」の概要を参照ください。
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