Ericsson と Kintsch の理論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/13 08:27 UTC 版)
「ワーキングメモリ」の記事における「Ericsson と Kintsch の理論」の解説
大人であれば、ほとんどの人が7桁の数字を正しい順番で繰り返すことができるが、一部には80桁もの数字を覚えられる人もいる。これは、数字の列をグループ化するなどの手法を訓練することで実現でき(数桁の数字を1つのチャンクで記憶する)、そのために数字を何かの文字列に置き換えてグループ化したりする。K. Anders Ericsson らが研究対象とした人はスポーツに関する記録を詳細に記憶していた。これは、いくつかのチャンクを上位のチャンクで結合し、チャンクの階層構造を構成していると考えられる。この場合、階層の上位の一部のチャンクだけをワーキングメモリに持ってくればよい。情報検索する際にはチャンクが伸張される。つまりワーキングメモリ内のチャンクは数字への検索手がかり(retrieval cue)の役割を果たしている。このような訓練は純粋な短期記憶の容量そのものを増やすわけではない点に注意が必要である。例えば、短時間で80桁の数字をおぼえられる記憶のエキスパートであっても、数字以外についての記憶成績では普通の人と変わらないといった例がある。訓練を受けた人は短期記憶の容量そのものが増えるのではなく、何らかの目的に特化した、専門化された記憶を開発するものと考えられる。Ericcson と Kintsch (1995) は人間は日常的な活動において自然と訓練された記憶を使っていると主張した。例えば何かを読むという作業では7個以上のチャンクが関与していると考えられる。そうでなければ小説や論文の文脈を理解できないだろう。この場合、読んだ内容のほとんどは長期記憶に保持され、それらを何らかの検索構造でリンクしている。ワーキングメモリには少しの概念しか保持できないが、それが検索手がかりとなって長期記憶を検索できるようになっている。Ericsson と Kintsch はこのようなプロセスを「長期ワーキングメモリ; long-term working memory」と呼んでいる。
※この「Ericsson と Kintsch の理論」の解説は、「ワーキングメモリ」の解説の一部です。
「Ericsson と Kintsch の理論」を含む「ワーキングメモリ」の記事については、「ワーキングメモリ」の概要を参照ください。
- Ericsson と Kintsch の理論のページへのリンク