CDK阻害因子とサイクリンD/CDK複合体活性の調節
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/09 14:36 UTC 版)
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p27とp21はG1/S期、S期サイクリン/CDK複合体の化学量論的阻害因子である。p21のレベルは細胞周期への移行時に上昇するのに対し、p27は一般的に細胞がG1期の終盤へ進行するにつれて不活性化される。高い細胞密度や分裂促進因子の枯渇、そしてTGF-βは、p27の蓄積と細胞周期の停止を引き起こす。同様に、DNA損傷や他のストレスはp21のレベルを増加させ、一方、分裂促進因子によって刺激されたERK2(英語版)やAktの活性はp21を不活性化させるリン酸化を引き起こす。 p27の過剰発現による初期の研究では、in vitroと特定の細胞種において、p27はサイクリンD-CDK4/6複合体とサイクリンE/A-CDK2複合体に結合して阻害を行うことが示唆された。しかし速度論的研究からは、p21とp27はサイクリンD/CDK複合体の組み立てを促進し、複合体の総活性と核局在を増加させることが示された。その後の研究から、p27-/-p21-/-マウス胎児線維芽細胞ではサイクリンD/CDK4複合体の形成が低下しており、p27の再発現によってレスキューされることが示され、p27がサイクリンD/CDK複合体の形成に必要である可能性が示された。 さらに、p27はサイクリンD-CDK4/6複合体に結合したまま、チロシン残基のリン酸化によって阻害型と非阻害型の切り替えが行われることが示唆され、p27によるサイクリン/CDK複合体の組み立てと活性の双方の調節機構に関するモデルが示された。また、p27のサイクリンD-CDK4/6への結合は、サイクリンE/CDK2複合体の不活性化に用いられるp27のプールを小さくすることで、さらに細胞周期の進行を促進している可能性がある。G1期終盤のサイクリンE/CDK2の活性(とS期序盤のサイクリンA/CDK2の活性)の増加はp21とp27のリン酸化を引き起こし、核外搬出、ユビキチン化、そして分解を促進する。
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