AaDO2
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/19 09:38 UTC 版)
酸素に特有の事項として、肺胞レベルのガス交換が重要である。二酸化炭素においては、拡散能が優れている(酸素の約 20 倍)ために肺胞気中の分圧と動脈血中のそれが等しくなり、PACO2 = PaCO2 が成立した。これに対して、拡散能が比較的低い酸素においては、肺胞気中の分圧と動脈血内のそれのあいだに較差が生じることとなり、これを肺胞気・動脈血酸素分圧較差 (AaDO2) と呼ぶ。AaDO2 の算出式は AaDO2 = PAO2 - PaO2 であり、正常は 10 Torr 以下である。20 Torr もあればかなり息苦しいと考えられる。 AaDO2 は、肺胞レベルのガス交換要因によって左右される。その要因としては下記のようなものがある。 換気・血流比の不均衡分布 低酸素血症の多くは換気・血流比の不均衡な分布による、AaDO2 の増大である。換気・血流比を測るには吸気と血液両方にアイソトープを入れてコンピュータ解析をするという結構大変な検査である。 ガス拡散能力 間質性肺炎や、肺水腫のような疾患では拡散障害が起こるといわれている。しかし、純粋に拡散のみの障害で低酸素血症が起こるかどうかは疑問である。というのも、拡散障害を起こす疾患は換気血流比不均衡分布、静脈性シャントなど他の因子も持っているからである。 静脈性シャントの存在 病的シャントの存在は低酸素血症をおこす。原因としては、左右シャントを伴うような解剖学的な異常、または、無気肺や肺水腫などでは肺毛細管の血流は肺胞気との接触を断たれる。難治性の低酸素血症の代表としてあげられる急性呼吸窮迫症候群 (ARDS) もシャントが主な原因となっている。 肺炎や閉塞性肺疾患などの多くの患者では換気・血流比の不均衡分布が著しくなり、AaDO2 は大きくなる。間質性肺炎、肺線維症などでは換気・血流比不均衡とともに拡散障害も関与する。シャントの増大は ARDS や広範な無気肺(初期)にもみられる。特に ARDS では AaDO2 が著しく大きい。 室内では吸入酸素分圧は 150 Torr なので、PaO2 = 150 - PaCO2/0.8 - AaDO2 [Torr] が成り立つ。 厳密に計算するのなら PaO2 = ("大気圧" - 47) × FiO2 - PaCO2/0.8 - AaDO2 [Torr] である。大気圧を 760 Torr、FiO2 を 0.21 とすると上の式が出てくる。
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