1ファクターショートレートモデル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/10/21 07:00 UTC 版)
「ショートレートモデル」の記事における「1ファクターショートレートモデル」の解説
以下は、単一の確率的ファクター、つまりショートレートが全ての利子率の将来の変動を決定するワンファクターモデルである。利子率の平均回帰的性向を表現しないRendleman–Bartterとホー–リーモデル以外はオルンシュタイン–ウーレンベック過程の特別ケースと考えることが出来る。バシチェックモデル、Rendleman–Bartterモデル、CIRモデルは自由パラメーター(英語版)の数が有限であり、ゆえにモデルを観測された市場価格と一致させるような方法("カリブレーション")を用いてこれらのパラメーターを特定することが出来ない。この問題はパラメーターが時間によって確定的に変動することを許容すれば克服される。この方法でホー–リーモデルとそれに続くモデルは市場データからカリブレーションを行うことが出来る。つまり、これらのモデルはイールドカーブからなる債券価格を正確に導出することができる。ここで、これらのモデルは通常ショートレートの2項ツリーを用いて実装される。 マートンモデル (1973) においてはショートレートは r t = r 0 + a t + σ W t ∗ {\displaystyle r_{t}=r_{0}+at+\sigma W_{t}^{*}} となる。ここで W t ∗ {\displaystyle W_{t}^{*}} はスポットのリスク中立測度の下における1次元のブラウン運動である。 バシチェック・モデル (1977) においてはショートレートは d r t = ( θ − α r t ) d t + σ d W t {\displaystyle dr_{t}=(\theta -\alpha r_{t})\,dt+\sigma \,dW_{t}} となる。しばしば d r t = a ( b − r t ) d t + σ d W t {\displaystyle dr_{t}=a(b-r_{t})\,dt+\sigma \,dW_{t}} と書かれることもある。 Rendleman–Bartterモデル(英語版) (1980) においてはショートレートは d r t = θ r t d t + σ r t d W t {\displaystyle dr_{t}=\theta r_{t}\,dt+\sigma r_{t}\,dW_{t}} となる。 コックス・インガーソル・ロス・モデル (1985) においてはショートレートは d r t = ( θ − α r t ) d t + r t σ d W t {\displaystyle dr_{t}=(\theta -\alpha r_{t})\,dt+{\sqrt {r_{t}}}\,\sigma \,dW_{t}} となる。しばしば d r t = a ( b − r t ) d t + r t σ d W t {\displaystyle dr_{t}=a(b-r_{t})\,dt+{\sqrt {r_{t}}}\,\sigma \,dW_{t}} と書かれることもある。 σ r t {\displaystyle \sigma {\sqrt {r_{t}}}} の項は(一般的には)利子率が負となる可能性を排除している。 ホー・リー・モデル (1986) においてはショートレートは d r t = θ t d t + σ d W t {\displaystyle dr_{t}=\theta _{t}\,dt+\sigma \,dW_{t}} となる。 ハル・ホワイト・モデル (1990) もしくは拡張バシチェックモデルではショートレートは d r t = ( θ t − α r t ) d t + σ t d W t {\displaystyle dr_{t}=(\theta _{t}-\alpha r_{t})\,dt+\sigma _{t}\,dW_{t}} となる。多くの定式化において、パラメーター θ , α , σ {\displaystyle \theta ,\alpha ,\sigma } の一つもしくは複数は時間に依存しないとされる。このモデルは対数正規として考えることが出来る。格子モデルに基いた実装においては3項モデルが通常用いられる。 ブラック–ダーマン–トイ・モデル (1990) ではボラティリティが時間に依存する場合のショートレートは d ln ( r ) = [ θ t + σ t ′ σ t ln ( r ) ] d t + σ t d W t {\displaystyle d\ln(r)=[\theta _{t}+{\frac {\sigma '_{t}}{\sigma _{t}}}\ln(r)]dt+\sigma _{t}\,dW_{t}} となり、依存しない場合のショートレートは d ln ( r ) = θ t d t + σ d W t {\displaystyle d\ln(r)=\theta _{t}\,dt+\sigma \,dW_{t}} となって対数正規モデルとなる。 ブラック–カラシンスキー・モデル (1991) は対数正規型であり、ショートレートは d ln ( r ) = [ θ t − ϕ t ln ( r ) ] d t + σ t d W t {\displaystyle d\ln(r)=[\theta _{t}-\phi _{t}\ln(r)]\,dt+\sigma _{t}\,dW_{t}} となる。ブラック–カラシンスキ・モデルはハル–ホワイト・モデルの対数正規的な応用のように見える。その格子モデルをベースとした実装は3項モデルに似たものになる(時間幅が変動する2項モデル)。 Kalotay–Williams–Fabozziモデル (1993) ではショートレートは d ln ( r t ) = θ t d t + σ d W t {\displaystyle d\ln(r_{t})=\theta _{t}\,dt+\sigma \,dW_{t}} となり、ホー–リー・モデルの対数正規版であって、ブラック–ダーマン–トイ・モデルの特殊ケースである。このモデルは"ソロモン・ブラザーズのオリジナルモデル"とほとんど似ていて、ホー–リー・モデルの対数正規バージョンの一つである。
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