鬼の世界
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/25 02:32 UTC 版)
「鬼」とは死者の霊魂や天地山川の精霊のことである。不老不死を理想に掲げる道教としては、鬼は理想を達成できなかった存在ということになるが、実際には誰もが死からは逃れられず、実際には道教と鬼の観念は深いかかわりを持っていた。 もともと前漢末頃には、死者の霊魂は泰山に集まるという観念があった。泰山には冥府(冥界の役所)があり、地上と同じような官僚組織が存在し、泰山府君(冥府の長官)が冥吏とともに一般の鬼を支配すると考えられていた。中国に仏教が流入すると、地獄の観念と結びつき、人は死後に泰山地獄に入って泰山府君による裁きを受け、冥界での処遇が決まると考えられるようになった。道教の鬼の考え方もこういった背景のもとに現れており、『真誥』では、死者が第一から第六まで存在する天宮に赴き、鬼界での処遇を決められることが描かれている。 『真誥』においては、世界が仙界・人界・鬼界の三部からなることと、それぞれの世界に住む者は固定しておらず行為の善悪によって上に昇ったり下に降ったり循環往来することが説かれている。人界から仙界への移動のためには、服気・存思などの道術や、経典の読誦、按摩・理髪・導引などの健康法などが必要とされる。一方、鬼界から仙界・人界に移ることができる者は、地下主者・地下鬼者と呼ばれる、鬼と仙との中間的な存在である。地下主者となることができるのは、生前に忠孝や貞廉であったり陰徳があった人で、死後長い年月を経て仙人になれるとされている。このようにして、現世において仙人になることができなかったものでも、死後に仙人になることがありうるとされ、仙界への道がより広く開かれることとなった。
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