高温ガス腐食
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/15 16:24 UTC 版)
大気環境以外で生じる乾食は高温ガス腐食と呼ばれる。ステンレス鋼に関わる代表的な高温ガス腐食が、高温硫化、浸炭、窒化、ハロゲンガス腐食などである。 高温硫化は、硫化水素ガスや亜硫酸ガスなどの雰囲気中で起こる。高温硫化の挙動は、高温酸化と同じように、表面にできる皮膜の生成と成長に支配される。高温硫化における皮膜は硫化物によって形成されるが、格子欠陥が多くてイオンが拡散しやすいため、この硫化物皮膜には高温酸化における酸化物皮膜のような保護力はない。実用合金全般を見渡しても、硫化水素ガス雰囲気中での最大の耐用温度は 600 °C が限界といわれる。クロムの添加は硫化を抑制する効果があるため、ステンレス鋼の耐高温硫化性は炭素鋼よりは優れている。クロムの他にはアルミニウムやケイ素の添加が有効で、硫化速度減少の効果を示す。 浸炭は、一酸化炭素、二酸化炭素、炭化水素などの高温ガス雰囲気中で起こる現象で、炭素原子が内部に拡散して炭化物を形成する。窒化は、アンモニア雰囲気などの窒素を含む高温雰囲気中で起こる現象で、窒素原子が内部に拡散して固溶体や窒化物を形成する。浸炭も窒化も材質を脆化させたり、クロム欠乏帯をつくり異常酸化の原因となったりする。浸炭に有効な合金元素には、保護性のある酸化物を形成するクロムとケイ素、炭化物を形成しないニッケルが挙げられる。窒化の場合は、特に有効な合金元素はニッケルで、ニッケル含有量が多いほど耐窒化性が増す。 ハロゲンガス腐食は塩素ガスや塩化水素ガス中で起こる腐食で、激しい腐食性を示す。塩素ガスや塩化水素ガスとの反応で生成される塩化物は低融点で容易に昇華するため、ハロゲンガス腐食の腐食速度は大きい。SUS304の例で、塩素ガス中での耐用温度が約 310 °C、塩化水素ガス中での耐用温度が約 400 °C である。
※この「高温ガス腐食」の解説は、「ステンレス鋼」の解説の一部です。
「高温ガス腐食」を含む「ステンレス鋼」の記事については、「ステンレス鋼」の概要を参照ください。
Weblioに収録されているすべての辞書から高温ガス腐食を検索する場合は、下記のリンクをクリックしてください。
全ての辞書から高温ガス腐食 を検索
- 高温ガス腐食のページへのリンク