高山植物の分類群構成からの知見
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/08 08:48 UTC 版)
「日本の高山植物相」の記事における「高山植物の分類群構成からの知見」の解説
日本列島の高山植物と、ネパール、東シベリア、アラスカ、南ロッキー山脈の高山植物とを科、属という分類群構成から比較してみると興味深いことがわかる。これら5つの高山植物相でいずれも10位以内に入るのがキク科、キンポウゲ科、イネ科、バラ科の4科である。その中でキク科とイネ科は北半球では低山から高山にかけて広く分布しており、ほとんどの北半球植物相で構成種の上位を占めている。5つの高山植物相の中で最も他と差異が大きいのがネパールの高山植物相で、他の4植物相では5位以内に入るカヤツリグサ科が13位となり、他では10位以下のサクラソウ科の順位が7位となるという特徴が見られる。 東シベリア、アラスカ、南ロッキー山脈の科構成はかなり似通っており、とりわけ東シベリアとアラスカの類似性は高い。日本の高山植物の科構成はヒマラヤよりも東シベリア、アラスカ、南ロッキーとの類似性が見られる。これは多くの高山植物が北極周辺や環太平洋地域を中心として分布を広げたことに原因があるものと考えられている。日本の高山植物の科構成で特徴的な点は、アブラナ科が少なく、他の植物相では10位以内に入らないツツジ科、ユリ科が10位以内に入っていることである。日本の高山植物相にツツジ科、ユリ科が豊富な理由は、多くのツツジ科、ユリ科の植物が低山帯から高山へ進出し、種分化が進んだためと考えられている。 一方属レベルでは、サクラソウ属、トリカブト属、リンドウ属、トウヒレン属がともに10位以内に入るなど、ネパールの高山植物相との共通性が見られる。日本の高山植物の属構成では、他の4植物相では10位以内に入らないヨモギ属、スミレ属、ウシノケグサ属が多いという特徴があり、これもやはり低地帯からの植物の進出を示唆している。 このような科、属構成から日本の高山植物相を見ると、日本の高山植物相は東シベリア、アラスカ、南ロッキー山脈といった北極周辺や環太平洋地域を中心として分布を広げた植物に、中国、ヒマラヤの植物相の影響も加わり、更に日本の低地帯から高山帯への植物の進出そして分化が行なわれてきたことが想定される。
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