顎口類の対鰭
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/07 14:40 UTC 版)
脊椎動物を含む左右相称動物の前後軸を特異化する Hoxコードの一部が顎口類の肢芽および鰭芽の極性化に流用されている。 対鰭およびそこから派生した四肢は顎口類の一部にのみ獲得された派生形質であり、対鰭の原基である鰭芽および四肢の原基である肢芽の前後軸と遠近軸に沿って、細胞群の位置価を決定する遺伝子群(HoxA クラスターと HoxD クラスター の遺伝子)がいくつか入れ子状となる発現パターンを示す。遠位から近位を通して Hoxa9 が発現し、中位から近位にはそれに加えて Hoxa10 と Hoxa11が、さらに最も遠位ではそれらに加えて Hoxa12 および Hoxa13 が発現する。また、前後軸方向に、領域の多くを Hoxd9 が、より後方ではそれに加えて Hoxd10 と Hoxd11が、さらに最も後方ではそれらに加えて Hoxd12 および Hoxd13 が発現する。同様のものが左右相称動物の前後軸において発現し、胚の各部の位置価を決定する Hoxコードであり、手足とは違い広範に、時期も早く発現する重要な発生プログラムである。そのため、体軸の前後を規定する発生機構が流用され、対鰭の発生プログラムとなったと考えられている。 また化石記録から胸鰭は腹鰭より起源が古いと考えられている。例えば、オストラコダームでは胸鰭は持つが腹鰭は持たない。そのため、胸鰭と腹鰭およびそれに由来する前肢と後肢はそれぞれ単純な系列相同物ではなく、胸鰭の進化で獲得した対鰭の発生モジュールを流用し、進化のある時点で後方に二次的に付加して腹鰭となり、それを進化させて四肢動物では四肢として用いているということが推定される。
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