顎前弓仮説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/01/10 14:52 UTC 版)
梁軟骨は1839年、マルティン・ラトケ(Martin Heinrich Rathke)により、ヨーロッパヤマカガシの観察で初めて記載された。そののちトマス・ヘンリー・ハクスリーによって1874年、脳頭蓋に二次的に寄与した内臓頭蓋であることが指摘されている。つまり、咽頭弓(pharyngeal arch)の中に発生する鰓弓骨格と連続相同であるとされたのである。さて、われわれ脊椎動物の顎は、顎骨弓(つまり、顎口類の胚で最も前方に発生する咽頭弓)から発生するとされている。梁軟骨が生じるのは顎骨弓よりも前方なので、もし梁軟骨が独立した咽頭弓の骨格であるならば、顎を獲得する以前の脊椎動物(つまり無顎類)は顎骨弓の前方にさらにもう1対かそれ以上の数の咽頭弓、すなわち顎前弓(premandibular arch)を持っていたことになる。顎前弓仮説はギャヴィン・ド=ビア(Gavin de Beer)ら多くの比較発生学者や比較形態学者によって支持された。またエリック・ステンシエー(Erik Stensiö)はケファラスピスなど甲皮類の化石を研磨して内部構造を調べ、顎前弓とそれに対応する脳神経を発見したと報告している(後にこれが顎骨弓そのものであることが判明)。しかし現在ではこうした顎前弓の存在はほとんど否定されており、それとともに梁軟骨が鰓弓骨格であるとする見方はほとんど行われなくなった。
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