音韻論と発音
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/11 08:38 UTC 版)
カナダ全体として、言語学上の定義はないが、西部と中部のカナダでは、ほぼ等質な英語を使っている(West/Central Canadian English参照)。ウィリアム・ラボフは、西部/中部のカナダ英語を定義付ける特徴はカナダ草原部 (Canadian Prairies) に集約されていると認識し、トロントとバンクーバーの都市部を含むその周辺部には、いくらかのパターンがある。 以下は、音韻論上保守的な、アメリカ北部のアクセントと比較した、カナダ英語の特徴である: Canadian raising: 無声子音の前の二重母音はカナダ英語では舌の位置が"高く"発音される。例えば、/aɪ/ (iceの母音)、/aʊ/(houseの母音)は無声子音 [p], [t], [k], [s], [f]の前ではそれぞれ [əɪ]、 [əʊ]と発音される。大西洋諸州 (Atlantic Provinces) を含むカナダ全体でこの傾向が見られる。 内陸部で特に顕著に見られ、ブリティッシュコロンビア州、オンタリオ州の一部の若者ではこの傾向は弱くなってきている。この傾向を持たないカナダ人も多くおり、アメリカ北部でもこの傾向は見られる。 Cot-caught merger: 円唇中舌後母音[ɔ](caughtの母音)と非円唇中舌後母音[ɑ] (cotの母音)はカナダ全域で区別されない。よって、caught-cot、Don-Dawnなどのペアは同音異綴語となる。なお、アメリカでも西部から中西部の広い範囲でこの区別はなされない。Speakers do not distinguish between the open-mid back rounded vowel [ɔ] and open back unrounded vowel [ɑ]. Canadian Shift: 大西洋諸州 (Atlantic Provinces) を除くカナダ全域で見られる特徴である。前述のen:cot-caught mergerからのチェインシフトである。batなどに見られる/æ/の母音が[a]になり、betなどの/ɛ/が[æ]に移動する。また、bitの/ɪ/が[ɛ]に近くなる。この傾向は西部の一部を除いてアメリカでは見られないが、米国西部のカリフォルニアでのCalifornia vowel shiftにも似たような変化が見られる。 本来では二重母音であるboatなどの/oʊ/、baitなどの/eɪ/は短母音に近い音質を持っている。特に内陸部で顕著である。 /o/や/aʊ/などの母音は後舌で発音される。 /u/は舌頂音の前では前舌よりに発音される。 /æ/は口蓋閉鎖音の前では緊張母音として発音される。 borrow、sorry、tomorrowなどの単語は[ar]ではなく[ɔr]と発音される。
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