間接言語行為
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/15 22:24 UTC 版)
言語行為を伴いながら、我々は日常会話を行っている。会話の内容と会話で伝達しようとしている内容は、多くの場合同一と考えられる。例えば、信長に皿を洗って欲しいなら「信長、皿を洗ってくれるかい?」と言うだろう。 しかし文字通りの意味は、会話で伝達しようとしている内容とは異なる可能性がある(前に文脈があった場合。ある種の「言語行為」は無言でも行われうるので)。ある特定の状況で信長に皿を洗わせたいとき、単に「信長…!」とだけ言うことで伝えられることもあるだろう。言語行為を行う一般的な方法は、ある言語行為を文字通り示す表現を使うことであるが、それに加えて、発話された表現に文字通り表れない言語行為を行うこともある。例えば、信長に窓を開けさせたい場合、「信長、窓に手が届くか?」と言ったとする。発話内容は単に信長が窓に手が届くかを聞いているだけだが、届くなら窓を開けて欲しいことを伝えているのである。この要求は直接的な質問を使って間接的に実行されるので、間接言語行為(indirect speech act)とされる。 間接言語行為は一般に、提案を拒絶する場合や要求を行う場合になされる。例えば、ある人が「会って茶でも飲まないか?」と言い、相手が「剣道の稽古がある」と言ったとする。2番目の話者は間接言語行為を使って提案を拒絶したのである。「剣道の稽古がある」という発話の文字通りの意味にはいかなる意味の拒絶も含まれないため、間接的とされるのである。 言語学にとっては、これは1つの問題を提起する。なぜなら、単純に考えたとき、提案を行った人が提案を相手に拒絶されたと理解できる理由が説明できないためである。ポール・グライスの研究成果に基づき、サールは我々が複数の発語内行為から導かれる対話的過程を手段として間接言語行為から意味を引き出せるとした。しかし、彼が提唱したプロセスでは、実際の問題を解決したようには見えない。社会言語学では、会話の社会的側面を研究し、様々な文脈での言語行為を研究する。
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