野狐憑き
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/13 15:13 UTC 版)
九州地方を中心にキツネに憑かれること(憑物・つきもの)を「野狐憑き」(やこつき)という。「野狐」の意味は上述したように明確な神格を持たない狐などを差していると考えられる。 憑物として表現される際の「野狐」の姿は伝承ごとにほぼ一致しており、その姿や性質は、管狐や飯綱、オサキなど同類の伝承と近似・類似している。実在のキツネと違って色が黒いとも白いともいい、ネズミより少し大きい、あるいはネコよりも小さいとされ、本来の野狐は目に見えないともいう。長崎県平戸市周辺では、野狐が常に大勢連れ立って歩くといわれることから「ヤコの千匹連れ」という言葉もある。 長崎県や佐賀県などの北部九州では、野狐に憑かれた者は病気のような症状が現れるといわれる。壱岐島ではヤコオともいい、イタチに似たもので、これが人の脇の下に潜むとその人はヤコオに憑かれるという。ヤコオに火傷の傷跡や疱瘡(天然痘)を嘗められると死ぬといわれていたため、疱瘡を患った者はヤコオを寄せつけないように蚊帳の中に入り、周囲に麻殻の灰をまくか、または刀剣を置いて野狐が中に入ることを防いだ。 南九州では家筋に野狐が憑くとされ、野狐を飼っている(野狐の憑いている)家筋はその後も代々憑き、養いきれなくなると牛馬に憑くこともあるという。野狐持ちの家の人は、野狐をけしかけて仲の悪い者に憑けるといい、鹿児島県揖宿郡喜入町(現・鹿児島市)ではこれに憑かれると半病人のようになってしまうといわれていた。
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