透過型回折格子の原理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/07 07:56 UTC 版)
ここでは周期的に並んだ格子の開口部を光が透過して回折する場合について考える。回折格子に対して波面が平行な単色光を入射し、そこから十分離れた場所にスクリーン等を置いて格子から出てくる光を観測してみると、周期的な干渉縞が現れる。この縞のパターン形状や周期は格子のそれに対応したものになっており、直線の並んだ1次元パターンの格子を用いた場合はやはり直線が並んだ1次元の干渉縞となる。干渉縞を入射光の中心軸に近い方から0次、±1次、±2次...と順序づけていく(縞は対称なのでマイナス符号も用いる)と、この各次数の干渉縞はその縞ができている方向に回折してきた光の干渉によって生じている。つまり、干渉縞ができるポイントでは各開口部から出てきた光が強め合いの条件(等位相の波の重ね合い)を満たしている。この条件が満たされるためには、各開口部から出てきた光が波長の整数倍の行路差を持っていなければならない。そこで格子周期をd、波長をλ、入射角をα、出射角をβとすると整数nを用いて d sin α + d sin β = n λ {\displaystyle d\sin \alpha +d\sin \beta =n\lambda } と強め合いの条件を表すことができる。ここでnは前述の次数に対応している。d、α、nが決まっている場合、この式より干渉縞が生じている方向への出射角βを求めると β = arcsin ( n λ − d sin α d ) {\displaystyle \beta =\arcsin {\Bigl (}{\frac {n\lambda -d\sin \alpha }{d}}{\Bigl )}} となり、波長λに依存していることがわかる。これが分光の起こる理由である。また、格子-スクリーン間の距離をL、干渉縞の周期をDとし、格子周期dに対しLが十分大きいとして近似を用いると D = λ L d {\displaystyle D={\frac {\lambda L}{d}}} と表せ、干渉縞の周期Dが格子周期dの逆数と格子-スクリーン間距離Lに比例することがわかる。よってL(>>d)の位置(フラウンホーファー回折領域)にできる干渉縞周期は、格子周期が小さく、観察場所が格子から離れているほど大きくなる傾向がある。 一方、Lがそれほど大きくない位置(フレネル回折領域)でも干渉縞は生じているのだが、その干渉条件は以上の場合とは異なる。フレネル回折領域では異なる次数の光どうしが干渉し合っており、Lを変えると干渉縞のパターンは変化する。干渉縞の形自体は周期的なのだが、その周期はフラウンホーファー回折領域の干渉縞とは異なり格子周期dとほぼ同程度のサイズになる。
※この「透過型回折格子の原理」の解説は、「回折格子」の解説の一部です。
「透過型回折格子の原理」を含む「回折格子」の記事については、「回折格子」の概要を参照ください。
- 透過型回折格子の原理のページへのリンク