覚醒・認知
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/19 00:16 UTC 版)
糖質コルチコイドは、海馬、扁桃体、前頭葉に作用し、アドレナリンと共に、ポジティブな感情やネガティブな感情に関連した出来事の閃光記憶の形成を促進する。この事は、糖質コルチコイドやノルアドレナリンの活性を遮断すると、感情に関連した情報の想起が阻害されるという研究で確認されている。また、コルチゾール濃度が高い状態で恐怖の学習を行った被験者は、その記憶の定着率が高かったことも報告されている(この効果は男性でより顕著であった)。糖質コルチコイドが記憶に及ぼす影響は、海馬形成のCA1領域に特異的なダメージを与えることによるものと考えられる。複数の動物実験で、長期にわたるストレス(糖質コルチコイド濃度の長期的な上昇を引き起こす)により、脳のこの領域のニューロンが破壊され、記憶能力の低下につながることが示されている。 糖質コルチコイドは、警戒心(注意欠陥障害)や認知力(記憶力)にも大きな影響を与える事が判明している。これは、糖質コルチコイドの循環レベルと記憶力のパフォーマンスが逆U字型になるという研究結果から、ヤーキーズ・ドットソン曲線に似ていると考えられている。例えば、長期記憶の形成過程である長期増強(LTP)は、糖質コルチコイド濃度が穏やかに上昇しているときに最適であるが、副腎摘出後(低糖質コルチコイド状態)や糖質コルチコイドの外因性投与後(高糖質コルチコイド状態)には、LTPの著しい低下が観察される。糖質コルチコイドの濃度が高くなると、情動的に興奮した出来事の記憶は強化されるが、ストレスや情動的興奮の原因とは無関係な内容の記憶は乏しくなる事が多くなる。糖質コルチコイドの用量依存的な記憶統合の促進効果とは対照的に、これらのストレスホルモンは、すでに保存された情報の検索を阻害する事が示されている。喘息薬や抗炎症薬などの糖質コルチコイド薬を長期間服用すると、治療中はもちろん、治療後も記憶や注意力に障害が生じる事が知られており、「ステロイド認知症(英語版)」と呼ばれている。
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