要物性の緩和
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/12 02:33 UTC 版)
民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)による改正前の旧法下においても、消費貸借の要物性は一定の範囲で緩和されていた(諾成的消費貸借)。 目的物の交付金銭消費貸借契約において現金の交付と同視しうる利益が借主に与えられたとみられる場合には消費貸借契約は成立する(通説・判例)。判例によれば国庫債券(大判明44・11・9民録17輯648頁)、預金通帳と届出印鑑(大判大11・10・25民集1巻621頁)、約束手形(大判大14・9・24民集4巻470頁)の交付があった場合にも消費貸借契約を成立させる。 抵当権の設定金銭消費貸借契約の現金授受前に担保として抵当権が設定されることがあり、消費貸借が要物契約であること、また、抵当権の付従性の点から問題となる。判例によれば、このような場合にも消費貸借契約は成立する(判例として大判明38・12・6民録11輯1653頁、大判大2・5・8民録19輯312頁)。この点は一般には抵当権の付従性の緩和として捉えられる。 公正証書の成立金銭消費貸借契約の公正証書が現金授受前に作成されることがあり、消費貸借が要物契約であることから問題となる。判例によれば、このような場合にも実際の消費貸借契約は成立するとし、金銭授受のあった時点から公正証書の効力は生じ、記載については金銭授受時に生じた債務関係を示したものと解される(判例。大決昭8・3・6民集12巻3250号、大判昭11・6・16民集15巻1125頁)。 交付の相手方消費貸借は貸主が借主ではなく借主の債権者に金銭を交付して成立することがあり(大判昭11・6・16民集15巻1125頁)、このような形式は住宅ローンで取られる(金融機関が住宅購入者の債権者となる住宅販売者に金銭を交付する場合)。
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