西洋における“竜血”
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/28 08:36 UTC 版)
紅海の入り口の東、インド洋の西端に浮かぶソコトラ島は、遅くともプトレマイオスの時代には、古代世界の重要な貿易中継地であった。島は乾燥した岩山ばかりで農業はほとんど成り立たなかったが、唯一とも言える特産品であったのが、世界中でも同島にしか育たないベニイロリュウケツジュ(Dracaena cinnabari)から採れる竜血であった。 1世紀のペリプルス『エリュトゥラー海案内記』にも、同島の特産品として記載が見える。 15世紀には、大西洋・カナリア諸島に赴きリュウケツジュ(Dracaena draco)の竜血を入手した者たちがいたという。これら2種の“竜血樹”はアフリカをはさんで東と西に遠く離れて分布しているが、同じドラセナ属に属する近縁種である。ほかにも類似の種が各地に分布している。 こうした“竜血樹”の樹皮を傷つけると滲みだしてくる、血のような色をした樹脂を集め、乾燥させてドロップ状にしたものがいわゆる“竜血”であり、アラビア、インド、ギリシアなどの商人の手によって各地に流通してきた。 “竜血”の呼称としては、「竜の血」系の名(ラテン語: sanguis draconis、英語: dragon's blood)と「シナバル」系の名( 古代ギリシア語: κινναβαρι、ラテン語: cinnabaris、英語: cinnabar)とがあったが、どちらの系統の名も、“竜血樹の竜血”以外に辰砂をも意味したという点には注意が必要である。古くは両者は同じ物質として扱われ、たびたび混同されたという。 なお、現在の英語では“竜血樹の竜血”は dragon's blood、“辰砂”は cinnabar と呼ぶのが一般的である。
※この「西洋における“竜血”」の解説は、「竜血」の解説の一部です。
「西洋における“竜血”」を含む「竜血」の記事については、「竜血」の概要を参照ください。
- 西洋における“竜血”のページへのリンク