西国の畦曼珠沙華曼珠沙華
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秋 |
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評 言 |
筆者が森澄雄にはじめて近々とお目にかかったのは平成十二年十月、書写山の麓で掲句の句碑開きがおこなわれたときであった。ときあたかも稲の実る頃で、句碑ちかくの田圃にはところどころ畦道を真っ赤に埋め尽くすほどの曼珠沙華が咲いて、まるで季節がこの句碑開きに合わせてくれているような感じさえあったのだ。 このときは翌日にまた年に一度恒例の「杉」のつどいが開催されて、「杉」創刊三十周年記念として「朱絃集」(合同句集)の入選句が発表され、題詠の部で拙句が澄雄選に入り、あまり入選しない筆者が壇上から賞品を受けて香川の句友達に揶揄されたりして、忘れることのできない行事となった。 さて掲句の特徴の一つは句中に名詞三、助詞一の僅か四語しか使われていないことで、読み手にはその隙間・隙間に句の情景をたっぷり想い描かせることだろう。もう一つの特徴は、俳枕としての「西国」から読み手には遍路や旅姿、遠くに建つ五重の塔、ついには西方浄土まで偲ぶように仕向けるのであろう。東国が関東を指すように西国とは、ただ近畿圏だけを指すのかというと、広辞苑には関西以西の諸国、特に九州地方。のちには中国・四国地方を含む、とたいそう広い地域のことをいう。更に西国三十三所には岐阜の華厳寺が入るから、部分的には東海圏にまで及ぶのだ。「西国」とは実に広大無辺を想わせる名でもあり、それが曼珠沙華の咲く畦が延々とどこまでも続くようなイメージを与えるのであろう。 |
評 者 |
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備 考 |
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