西野草几

現代俳句データベース(人名)

西野草几

西野草几の俳句

あめんぼう水の窪んでをりにけり

かつかつと馬遠ざかる桐の花

かなかなや鳴門の渦の音消えて

かはたれや干大根の縄梯子

ががぶたの花や膝つく祈るごと

どの坂を下りても港道をしへ

ひるがほの白灯台を登らむと

ぶつかつておいて死ぬふり金亀子

わが箸をつまむ箸あり闇の汁

ローマより赴任の神父春炬燵

八人を生し母老いぬ帰り花

八朔や馬ことわりて徒でゆく

出目金に睨まれてゐる昼の酒

剥製の雉子の義眼春の雷

去年今年うしろ姿の厨妻

春雷や鷗は礁うばひあひ

春風の大渦潮を囲みけり

木枯や子の口笛の夢さめて

残雪の石鎚指してゆく船よ

母の日や乳房に黒子ありしこと

玩具箱くつがへりをり花曇

直ちには言葉返らず遠花火

短日や尻つぽ追ひかけ犬回る

硝子屋の窓くもりなし寒の梅

秋光を折り曲げてゐる堰の水

竹の子が活断層を割つて出る

羽ばたきて翔たぬにはとり花南瓜

落椿こちら向くのを拾ひけり

蕗の葉やひと粒ごとの雨の音

薔薇崩る無声映画をみるごとく

起重機に舟吊られゆく去ぬ燕

邪鬼を踏む仁王の足に蟻の列

露草やにはとり水を噛んで飲む

鬼瓦踏台にせる巣立かな

鴨ひいて大師の笠の鴉かな