製品の保存方法(手入れ)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/04 05:41 UTC 版)
皮革は、長期間放置すると硬化する傾向がある。硬化すると、製品としての美しさや機能性が損なわれるのみならず、ひび割れて使用できなくなるおそれがある。そこで、革の柔らかさを維持するため、保革油(保革剤)を塗ることがある。保革用の塗り物には様々あるが、製品に適した塗り物を用いないと、染みや劣化の原因ともなるので、注意が必要。保革油を塗る前に汚れを落とさないと、染みや劣化の原因となることもあるので、ブラシや布でよく汚れを落としてから塗る。 スエードやヌバックなど起毛革には、専用の洗浄剤やクリーナー、スエードブラシを用いる。スエードブラシには、細い真鍮の針金が使われていて、起毛革を毛羽立たせる効果がある。ただし、起毛革以外に使うと傷の原因となる。 また、高湿度や汚れによって、カビが発生することがある。皮革の製造過程でカビの原因となる有機物は取り除かれるので、主なカビの原因は製品になった後に付着した汚れである。従って、表面をきれいにすることが保存性を高めるのに効果がある。多くの製品には塗料が塗られているので、汚れ落としのためにベンジンなどの有機溶剤を使用すると、その塗膜が損傷することがある。革の構成要素であるコラーゲンはタンパク質の一種であり、熱で変性して強度や柔軟性を失うので、濡れた皮革製品を乾かす目的で火の近くに置くのは避けた方がいい。 このように、天然皮革は手入れが大変であるにもかかわらず、使えば使うほど馴染んできて美しくなることから、現在でも合成皮革に完全に取って代わられることはない。 一部の工業製品のエアポンプに現在も用いられている皮革製ポンプカップは、ある程度の油分が浸透していないとシリンダーとの密着性が低下して気密漏れを起こしてしまうため、使用前にはミシン油などの油を必ず注油しなければならない手間がある反面、合成ゴムに見られる揮発油などによる膨潤や経年劣化による硬化が起こりにくく、摩擦による磨滅や断裂が起きるまでは繰り返し使用可能な耐久性がある為、趣味者の間では近代的なゴム製ポンプカップよりも皮革製が好まれる場合もある。
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