被害者・証人の不利益
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 15:24 UTC 版)
被告人と同様に、被害者・証人も裁判員の関与を拒否できない。そのため、例えばセカンドレイプを恐れる性犯罪の被害者が裁判員の面前に出ることを拒絶したため、検察側が適切な容疑で被告人を立件することを断念する事例も発生している。2010年4月には、連続通り魔から性的暴行を受けた女性が裁判員の関与を拒絶したため、裁判員制度の対象となる強姦致傷容疑での立件が見送られ、制度の対象とならない強姦容疑での立件に引き下げられている。 無遠慮な裁判員によって被害者・証人が興味本位の尋問に晒されるおそれがある。 裁判員選任の手続きでは被害者との関与の有無を確認するため、被害者氏名などの個人情報が裁判員候補者に伝えられる。裁判員に選任されなかった候補者は守秘義務の対象にならないため、被害者のプライバシーが外部に流出し、住所も特定される恐れがある。特に、被害を他人に知られることを拒絶する性犯罪の被害者が、誹謗中傷などの二次被害に晒される危険性がある。 性犯罪の裁判員裁判において、検察側が「(当該性犯罪の)被害者と同一区域に居住しており、被害者を知っている可能性がある」などとして裁判員候補(補充裁判員も含む)から排除しようとしたものの、除外対象者が、裁判員法で忌避可能な人数を超過したためとして、そのまま裁判員候補に選任されてしまった事例がある。引用の事例では、被害者と面識のある者はいなかったとされるが、被害者の知人(特に悪意を持った知人)を裁判員対象から忌避できない可能性が指摘されており、セカンドレイプなど、性犯罪の「第二の被害」の新たな発生の可能性が懸念されている。
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