血液ガス分析の手順
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/19 09:38 UTC 版)
ここでは非常に大まかな方法論を述べる。 まず、PaCO2 が 40 Torr より高いか低いかで肺胞低換気があるのか肺胞過換気があるのかを判断する。 次に PaO2 をみて、低酸素血症があるかどうか判断する。但し、室内気吸入ではその値はそのまま肺胞のガス交換状態を示しているが、酸素マスクなどで酸素吸入がなされていれば、それを考慮しなければならない。 AaDO2 をみて、肺胞レベルのガス交換障害があるかどうかを判断する。AaDO2 が高値であればその原因を考え治療方針を立てる。 またアシドーシスとアルカローシスの診断手順を纏める。これは混合性酸塩基異常を検出するための方法である。 まずアシデミアがあるのかアルケミアがあるのかを調べる。基本的に代償機構ではアシデミアがアルケミアになるような大きな代償は起こらない。アシデミアがある時点で、呼吸性アシドーシスか代謝性アシドーシス、あるいはその両方が最初に起こったと考えてよい。 アシデミアあるいはアルケミアが代謝性のものなのか、あるいは呼吸性のものなのかを考える。 アニオンギャップ (AG)、AG = "ナトリウムイオン" - ("重炭酸イオン" + "クロールイオン") を計算する。AG が増加していればそれだけで代謝性アシドーシスの存在を意味する。また AG が増加していれば補正重炭酸イオンを計算する。これは ΔAG = AG - 12 として "補正重炭酸イオン" = "重炭酸イオン" + ΔAG で計算され、これは代謝性アシドーシスを来たした陰イオンの増加分がなかったと仮定した場合の重炭酸イオンの値である。 代償性変化が一次性の酸塩基平衡異常に対して予測された範囲内にあるかどうかを検討する。この代償性変化が予測範囲を外れている場合は他の酸塩基平衡異常をきたす病態が存在することを意味する。代償性変化以外の混合性酸塩基異常というものは比較的ありふれた病態であり、代償性変化の予測値を用いることでそれらを検出することができ、血液ガス分析の診断能力をあげることができる。代償性変化の予測値は次のような経験則が知られている。 代謝性アシドーシスの呼吸性代償 ΔpCO2 = 1 ~ 1.3 × ΔHCO3- MAX:pCO2 = 15 mmHg 代謝性アルカローシスの呼吸性代償 ΔpCO2 = 0.6 ~ 0.7 × ΔHCO3- MAX:pCO2 = 60 mmHg 呼吸性アシドーシスの代謝性代償 急性 ΔHCO3- = 0.1 × ΔpCO2 MAX:HCO3- = 30 慢性 ΔHCO3- = 0.3 ~ 0.35 × ΔpCO2 MAX:HCO3- = 42 呼吸性アルカローシスの代謝性代償 急性 ΔHCO3- = 0.2 × ΔpCO2 MAX:HCO3- = 18 慢性 ΔHCO3- = 0.4~0.5 × ΔpCO2 MAX:HCO3- = 12 なお、通常は Δ 計算をおこなうときは HCO3- は 24、pCO2 は 40、AG は 12 を正常値として差分をとることが多い。
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