蟬の穴のぞけば被爆の16歳
作 者 |
|
季 語 |
|
季 節 |
夏 |
出 典 |
|
前 書 |
|
評 言 |
作者の16歳の実体験である。20万人の人々が5千度の熱線を浴びたその日、作者は学徒動員で広島市郊外の工場にいて難を逃れた。そこに次々運ばれてくる被爆者の看護に携わったという。 軍国の少女は日本の敗戦など思うはずもなく、少年は特攻隊を志願して散っていった。兄は南太平洋方面で戦死、市内にいた一家6人が被爆したという。その経緯は被爆体験集「木の葉のように焼かれて」43集に収録されている。 ひろしまの蟬の木夜は少年棲み みえ子 広島の夏。無風の湿った暑さ、夜は魂となって少年たちの還ってくる「木」である。その中に兄上の魂もあるのでは と心揺さぶられるのである。 ヒロシマの椅子が足りない蟬しぐれ みえ子 原爆忌の慰霊祭「黙祷」の静寂を際立たせて蟬の声が聞こえる。 2012年アメリカの大使が初めて慰霊祭に参列した。 作者伊達みえ子氏は「私の原点はヒロシマだと思っている。」と言う。故小田保氏は「ヒロシマ」「8月」にこだわり続けて欲しいと励まされたという。 パールバックは小説「神の手を制御せよ」を通して原爆を作った人々の中に、良心の呵責に怯え苦しんでいる人たちがいることを主人公に語らせている。 註:故小田保氏・・「シベリア俘慮記抑留俳句選集」編者 「海程」創刊同人 広島市福山市出身 写真提供=フォトクラブ吉川 |
評 者 |
|
備 考 |
- 蟬の穴のぞけば被爆の16歳のページへのリンク