舟漕ぎ音頭
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/13 10:03 UTC 版)
ニシン漁に使われる舟は、「保津舟」(ぼつぶね)、「三半舟」(さんぱんぶね)と呼ばれる全長13mほどの手漕ぎの和船である。船の左右に長さ3mの櫂が合計で8から6丁、艫(船尾)に1丁の艪が取り付けられ、櫂に漁夫1人が取り付いて船を漕ぎ進める。 網を仕掛けるため、或いは群来の知らせを受けて漁場に繰り出す漁師たちが舟漕ぎの調子を整えるため歌われた唄が舟漕ぎ音頭である。船頭や音頭取りのハオエ(独唱)に続いて漕ぎ手全員がシタゴエ(斉唱)で答える形式を取る。 以下は、小樽市郊外、忍路の例。 (太字は船頭のハオエ(独唱)、下線は漕ぎ手のシタゴエ(斉唱)) オーシコー オーシコー エンヤァーアエー オーシコー エンヤサァーアエー オーシコーオー オオコーイヨー オーオシコー 以下、繰り返し ホーラァー ホーラァーヨエサァーエー エンヤレ ホーラアオーシコーオー オオコーイーヨ オーオシコー 漁場までの行き帰り、あるいは速度変更、航路変更などさまざまな場面に応じ、掛け声を使い分ける。積丹半島東岸、積丹町の美国集落では一般的な船漕ぎの際は「オーシコー」を用いたが、状況に応じて以下の掛け声を用いた。 流し漕ぎ ヤサホータエ ヤサホータエ ヤサホータエ ヤサホータエ エーソラエー ヤサホータエ ヤサホータエ ヤサホータエ 立ち漕ぎ オーホラヨー オーホラヨー オーホラヨー オーホラヨー いくら大家の オーホラヨー 姉娘でも オーホラヨー 一度は他人の オーホラヨー 手にかかる オーホラヨー オーホラヨー オーホラヨー オーホラヨー オーホラヨー 立ち漕ぎ ヤーセーノヤーセー ヤーサーノヤーセー ヤーセーノヨー ヤーセーノヤーセー ヤーサーノヤーセー ヤーセーノヨー アイヌの婆ッコ 長い煙管くわえで バフランバフラン アイヌの婆ッコ 長い煙管くわえで バフランバフラン 後退 ヨイトサンヨー ヨイトサンヨー ヨイトサンヨー ヨイトサンヨー 後ゲも銭コだ ヨイトサンヨー 一般的な船漕ぎでも逆走でも、音頭取りのハオエに漕ぎ手が斉唱で答える形式は、全道的に変わりがない。 時に船頭は「ホラ道中は長いぞ」「ホラ若い衆が揃った」「今日は日も良し…雇いの盆だでぁ」「ホラこれさえ済めば…ホラ髪長お酌で」などと即興で歌詞を作って歌い上げる。漕行が一時間以上にも及ぶ際は、船板を踏み鳴らしては気合を入れ、あるいはわざと歌詞を冗長に唄い上げることで漕ぎ手に休息の隙を与える。ハオエの語尾とシタゴエの語頭が重なり合って微妙な和音が作り出され、ニシン漁場独特の空気を醸しだす。
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