自然電位の差
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/08 14:42 UTC 版)
異種金属接触腐食は、2種の金属の自然電位の差で起こるので、この差をできるだけ小さくすることが望ましい。上記の式でいえば、Ec* − Ea* を小さくすることに相当する。異種金属接触腐食を無視できる腐食電位の差としては、50 mV 以下や 100 mV 未満といった目安値がある。ただし、許容値の統一的な見解はない。後述のように卑な金属と貴な金属の表面積の比が影響を持つので、卑な金属の表面積が大で貴な金属の表面積が小のときは、許容値を 10 mV 程度とする見解もある。 自然電位の差を判断するのに、腐食電位列やガルバニ系列と呼ばれる図が目安として役立つ。腐食電位列とは一つの環境に対するさまざまな金属の自然電位を電位順に並べたものである。いくつかの注意点はあるが、腐食電位列を目安に電位差の小さい金属を選べば異種金属接触腐食を低減できる。ただし、自然電位の差を判断する上で、次のような注意点がある。 第一に、環境が変われば腐食電位列が変わる点である。アルミニウムの変化は特に大きく、海水中では炭素鋼よりも卑だが、大気中では炭素鋼と同等程度となる。そして、海水以外の環境で確立された腐食電位列は、現在のところ存在しない。海水環境の腐食電位列として Francis L. LaQue の腐食電位列がよく引用されるが、様々な影響因子によって変動する可能性があることに留意が必要である。LaQue が載せている304系ステンレス鋼の自然電位はマイナス側の値だが、+0.4 V まで上がり得るケースも報告されている。 第二に、不働態化や錯化が関係すると反応機構が複雑になり、電位関係が変わる点である。例えば海水中のステンレス鋼の自然電位は、ステンレス鋼が不働態状態にあるか局部腐食発生(活性態)状態にあるかによって異なる。局部腐食を防止するには、後者の状態の自然電位を参照する必要がある。また例えば缶詰のスズメッキ鋼では、錯化によって本来の自然電位の関係が逆転している。普通はスズが鉄よりも貴だが、食品中の有機酸によって鉄イオンとスズイオンが錯化し、鉄がスズよりも貴となる。これによって缶詰内部で鉄の腐食を抑制している。
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