膜孔形成溶血素
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/01/25 17:35 UTC 版)
溶血素の多くは、細胞膜上に孔を形成することによって赤血球、白血球、および血小板の溶解を引き起こす膜孔形成毒素(Pore-Forming Toxin:PFT)である。 溶血素は通常、水溶性の単量体として細菌から分泌される。この単量体は拡散して標的細胞へと近づき、標的細胞の膜上の特定の受容体に結合する。結合後、単量体が集合してオリゴマー化して環状七量体を形成する。 溶血素は黄色ブドウ球菌 (Staphylococcus aureus)、大腸菌 (Escherichia coli)、腸炎ビブリオ (Vibrio parahemolyticus) などの多種多様な細菌によって分泌される。黄色ブドウ球菌は膜孔形成溶血素産生性の病原細菌の代表例である。ブドウ球菌α溶血素孔と呼ばれる環状複合体を産生する。黄色ブドウ球菌はまず、感受性細胞の外膜に結合するα溶血素単量体を分泌する。7個の単量体が膜上に集合して七量体となり、水分子、イオン、および有機低分子の制御不能な透過を促進する水で満たされた膜貫通チャネルを形成する。この膜貫通チャネルは細胞膜上の孔となり、ATPなどの生命活動に重要な物質の急速な放出、膜電位とイオン勾配の消散、細胞壁破裂(細胞溶解)につながる不可逆的な浸透圧的膨潤、並びに、DNA断片化をもたらす生体によって作り出されていた濃度勾配にしたがったイオンの流入や流出を引き起こすので、最終的に細胞死を引き起こす。
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