細胞への作用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/13 17:18 UTC 版)
「インスリン様成長因子結合タンパク質3」の記事における「細胞への作用」の解説
IGFBP-3は、IGF-1とIGF-2によるIGF1Rの活性化(細胞増殖を促進する)を遮断することで多くの細胞種に対して抗増殖作用を示す。例えば、食道上皮細胞では、IGF-1刺激に対する応答は分泌されたIGFBP-3によって抑制され、上皮成長因子(EGF)によってIGFBP-3がダウンレギュレーションされることで応答は回復する。IGFBP-3は、IGF1Rを完全に欠失した細胞に対してもIGF1Rシグナルに対する作用とは独立した機構で細胞の機能を阻害する。IGF(またはIGF1R)に依存しない効果は、IGF結合親和性が低下した変異型IGFBP-3を用いて研究が広く行われている。分化中の軟骨細胞前駆体細胞において、IGFBP-3によって誘導されるアポトーシスはIGF非結合型のIGFBP-3変異体でも等しく観察され、その機構にはIGFの結合が関与していないことが示されている。IGFBP-3によるIGF1R非依存的な成長阻害は、BaxやBad(英語版)などのアポトーシス促進タンパク質の誘導が関与している可能性があり、セラミド(アポトーシス促進脂質)によって媒介されているか、セラミドの作用を増強している可能性がある。 IGFBP-3の典型的な成長阻害効果とは対照的に、IGFBP-3による細胞増殖の刺激も観察されている。この作用はIGF刺激による増殖を促進する場合と、IGF-1が存在しなくても起こる場合とがある。内皮細胞や乳腺上皮細胞では、IGFBP-3の刺激作用にはスフィンゴシンキナーゼ(英語版)の活性化と、EGF受容体のトランス活性化によって増殖を促進する生理活性脂質であるスフィンゴシン-1-リン酸の生成が関与していることが示されている。
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