直接互恵
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/09 14:11 UTC 版)
直接互恵は、トリヴァースが提唱した進化生物学の概念であり、個体間の協力が進化するメカニズムの一つである。直接互恵では、2つの個体が繰り返し出会い、出会うたびに協力か裏切りを選ぶ。自分が今回協力すれば相手も次回協力してくれるかもしれないので協力は有利かもしれない。この直接互恵は、ゲーム理論の繰り返し囚人のジレンマに相当する。 アクセルロッドが行った囚人のジレンマのコンピュータ・トーナメントでは単純なしっぺ返し戦略が優勝したが、しっぺ返し戦略の弱点はすぐに見つかった。「震える手」や「曖昧な心」による誤作動があると、しっぺ返し戦略の成績は悪化する。単純なしっぺ返し戦略では間違えて裏切ると報復合戦に陥って間違いを修復できないからである。そこで、しっぺ返し戦略に代わって「寛容なしっぺ返し」戦略が台頭する。これは相手が協力するときは常に協力するが相手が裏切っても時々協力する戦略である。 次いで、さらに単純な「勝てばそのまま負ければかえる」戦略が台頭する。これは、うまくやっている時は手を替えないが、さもなければ替えるという戦略である。「勝てばそのまま負ければかえる」戦略は、成績の計測次第で「しっぺ返し」や「寛容なしっぺ返し」より強い。しっぺ返し戦略は裏切者の多い社会において協力を促進するが、一旦協力が確立されると「勝てばそのまま負ければかえる」戦略のほうがもっと協力を維持できる。 協力を促す戦略は無数にあるが、その一般法則は次の通りである。同じ2つの個体が再び出会う確率wが、協力行動の費用 c と利益 b の比率を上回る場合(w > c / b)に限り、直接互恵は協力の進化を促す。
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