生物地理学において
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/26 00:07 UTC 版)
さまざまな生物の分布を見ていると、多くの種の分布境界線がほぼ重なっている場合がある。その線を挟んで多くの生物が入れ替わることになるから、かなり異なった生物相になる。つまり、生物相の境界線になるわけである。このようなものを、生物地理学では分布境界線として特に取り上げ、それぞれに名前をつける。 このような分布境界線の最初のものは、アルフレッド・ウォレスの発見になるものである。彼は1868年、インドネシアにおける生物研究の中から、主として動物相の差をもとにその存在を主張した。彼の言う境界線はスンダ列島のバリ島とロンボク島の間を通り、ボルネオ島、セレベス島の間を経て、ミンダナオ島の南へ抜けるものである。彼によると、これより西は東南アジアを含む東洋区の生物相を持ち、これより東はオーストラリア区に属する。この境界線は、のちにウォレス線と呼ばれるようになった。 その後、エルマー・ドリュー・メリルは植物相の研究に基づいて、ミンダナオ島の南へ抜ける線を延長し、パラワン島以外のフィリピンの西を通り、バシー海峡で東へ折れる線を提唱した。これは後に新ウォレス線と呼ばれるようになった。その後、台湾南部に位置する紅島礁と台湾の間へこの線を延長する説もある。 一方、これと関連してM.ウェーバーが淡水魚の研究をもとに、チモール島の東からセラム、モルッカの西を通り太平洋へ抜ける境界線を提唱し、これは現在ではウェーバー線と呼ばれる。この線より東は完全にオーストラリア系、西には東南アジアの要素が入ると言う。つまり、ウォレス線とウェーバー線の間の部分が旧熱帯区とオーストラリア区の中間的部分だと言える。 現代の視点で言えば、東洋区の生物相は、アジア大陸を中心に発達したものであり、これに対してオーストラリア区の生物相はそれと隔離されて発展してきたものが、大陸の移動により接近したことで、その接触面において少しずついり交じりつつあるのを見ているわけである。なお、スラウェシ島(セレベス島)はウォレス線より東にあり、オーストラリア系の要素が強いが、バビルサのように固有の真獣類が生息する。これは、この島がもともとはオーストラリア側とアジア側の2つの島であり、それらが接触して一つになったのが今のこの島なのではないかと言われている。
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