猿丸大夫の活躍
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/11/22 20:51 UTC 版)
そのあくる日はいよいよ決戦の日となった。日光権現は大蛇の姿となり、その従える神兵は雲霞のごとく飛び出す中で、猿丸大夫は櫓を立て、その上から敵が来るのを待ち構えていた。すると湖に、大きな百足に姿を変えた赤城大明神が現れる。猿丸大夫はその百足めがけて矢を射ると、矢は百足の左目に命中した。百足はそのまま退散し、戦いは日光権現が勝利した。 日光権現は猿丸の働きに感じ入り、「汝の働きでこの国を守ることが出来た。汝はそもそもわが孫に当たるから、今からこの国を汝に譲る。わが子太郎大明神(馬頭御前)とともにこの山の麓の人々を助け守るがよい。そして汝をこの山の神主としよう」といったので、猿丸は喜びのあまりに舞い踊り歌を唄った。それで湖の南の岸をうたの浜(歌ヶ浜)とはいうのである。 すると、空から紫の雲が降りてきて、その雲の中より一羽の鶴が現れた。その羽の上には左に馬頭観音、右に勢至菩薩が現れていると見るや、鶴は女の姿に変じて猿丸に次のように告げた。「馬頭観音は太郎大明神、勢至菩薩は汝猿丸の本地である。汝は恩の森(不詳、小野のことだろうともいう)の神となって衆生を導くがよい」と。鷹の雲上は本地虚空蔵菩薩、阿久多丸は地蔵菩薩、青鹿毛は実は馬頭御前(太郎大明神)に生まれ変わり、さらに馬頭観音として現れた。有宇中将は男体権現その本地は千手観音、またその妻の姫君は女体権現にして阿弥陀如来の化身である。のちに太郎大明神は下野国河内郡の小寺山(現在の宇都宮二荒山神社近くの下宮山)に鎮座して、若補陀落大明神と号し人々の尊崇を集めたのである。
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