水生不完全菌の周辺
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2015/03/29 01:40 UTC 版)
水生不完全菌は、水中の落ち葉という生活場所が発見されたことで新しい分野として発見され、その特殊な分生子の形態によって注目を受けた。さらに泡からの採集という方法の発見により、その研究分野を拡大して来た。しかし、その研究の過程で、同じような視点でより広く見渡したことにより、水生不完全菌的な分生子は、水中だけにあるわけではないことが分かって来た。 たとえば、森林内の落葉層を集め、バケツに放り込み、水に浸して表面に浮き上がる泡を集めると、水生不完全菌様の分生子が見つかることがわかった。そこには水生不完全菌として知られたものもあり、一部の水生不完全菌が陸上でも生活していることがわかる。しかし、そうではないものも含まれる。これらは、森林内の落ち葉の表面を覆う水の膜に分生子を出しているのではないかと考えられている。同じように、露にぬれた植物体や、霧で湿ったところからも、それらしい分生子が発見される。このように、四放射型などの分生子の形が、必ずしも水生不完全菌に限らないことがわかったことで、このような胞子を作る菌類をまとめる名称として、Ingoldian Fungi(Ingold氏系の菌類)という呼び名が使われることがある。 他方、水辺の湿ったところからも、それらとは異なった、独特の分生子を形成するものが知られるようになった。それらは、渦巻型のものや、細かい枝が籠のようになり、内部に空気をとじ込めるようになっていたり、どうやら、水面に分生子を浮かせることを目指した適応をしていると思われる。これらは半水生菌とよばれることがある。 なお、渓流の泡をすくって観察すると、様々なものが吸着されて観察できる。中には水生不完全菌の分生子らしいと培養された結果、実はハエカビ目のものであったり、コケ植物の無性芽であることがわかった例もある。水生不完全菌の胞子がプランクトンとして採集される例もあるが、大抵の場合、その分野の方にはカビの知識がないので、ゴミとして無視されるようである。
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