歯クジラ類の発声
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/19 16:49 UTC 版)
ハクジラ類(toothed whales)は、クジラの歌として知られている、長く続く、低い周波数の音をださず、甲高い周波数のクリックス及びホイッスル(警笛音)といった突発音を発する。単一のクリックスは、一般にエコーロケーションに使われるが、他方、複数のまとまりあるクリックスや警笛音は、コミュニケーション目的で使われる。イルカの大きな群では、様々なノイズから成る、本物の不協和音が発せられるが、この音の意味については、ほとんどわかっていない。 音自体は、人間の鼻孔通路にも似た、音唇(フォニック・リップス、phonic lips)と呼ばれる頭部の構造を空気が通過することで生み出される。空気が狭い通路を通過するにつれ、音唇の薄膜は互いに吸い寄せられ、周囲の組織を振動させる。この振動は、人間の喉頭部での振動と同様、極めて敏感に意識的にコントロールされる。振動は頭部の組織を通過してメロン体(melon)に至り、メロン体は音を整形すると共に、エコーロケーション用の音波へと変換する。ハクジラ類は、マッコウクジラ(sperm whale)を例外として、すべて、二組の音唇を備えており、そのため、独立した二種類の音を同時に発することが可能である。空気は音唇を通過した後、前庭気嚢(vestibular sac)に入る。ここより空気は、鼻部複合体(nasal complex)の下部へと循環可能で、再度、発声のため利用できる。またはそのまま噴気孔から排出される。 フォニック・リップスのフランス語での名称は、museau de singe - つまり、「猿の唇」であるが、これは形状が類似しているためとされる。2004年にCAスキャン(Computed Axial Scan)及び単光子放出CTスキャンを用いた、新たな頭蓋解析が行われ、少なくともバンドウイルカ(bottlenosed dolphin)の場合、空気は、口蓋咽頭括約筋(palatopharyngeal sphincter)によって肺より鼻部複合体に供給され、イルカが吸気を維持できる限り、発声プロセスは継続可能であることが示されていた。
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