格組織の衰退
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/28 03:59 UTC 版)
言語変化によって格組織が衰退し、ごく一部の語だけが格変化を痕跡的に残しているという場合がある。たとえば、インド・ヨーロッパ祖語(印欧祖語)は語形変化によって8つの格を区別していたと推定されている。しかし、印欧祖語から派生した言語の一つであるヒンディー語では、表 1 のように名詞が格変化によって区別する格は 3 つだけである。लड़का (laṛkā)「少年」は男性名詞、लड़की (laṛkī)「少女」は女性名詞の例である。 表 1. ヒンディー語の名詞の格変化単数複数単数複数直格laṛkā laṛke laṛkī laṛkiyā̃ 斜格laṛke laṛkõ laṛkī laṛkiyõ 呼格laṛke laṛko laṛkī laṛkiyo लड़का「少年」लड़की「少女」また、ヒンディー語の形容詞は一部を除いてほとんどが格変化をしない。ヒンディー語では、衰退した格組織に代わって、後置詞が様々な格の区別を表すのに用いられている。 ドイツ語も印欧祖語から派生した言語の一つであるが、その格組織はヒンディー語とは別種の変化を遂げている。ドイツ語では、限定詞や句頭の形容詞は格変化によって主格、属格、与格、対格の4つを区別するが、名詞自体はほとんどの場合語形変化しない。すなわち、格の区別はもっぱら限定詞や形容詞の語形変化によって表されており、名詞の格変化はわずかに痕跡として残っているに過ぎない。
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