松ぼっくりとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > デジタル大辞泉 > 松ぼっくりの意味・解説 

まつ‐ぼっくり【松×毬/松陰嚢】

読み方:まつぼっくり

《「まつふぐり」の音変化》「松笠(まつかさ)」に同じ。


松かさ

(松ぼっくり から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/01 04:47 UTC 版)

開いた状態の松かさ(クロマツ
開いた状態の松かさ(Pinus coulteri
エキナタマツの成熟した松かさの断面図。種子が確認できる。

松かさ、松毬(まつかさ、: conifer conepinecone)とは、マツ科マツ属)の球果のことである。松傘松笠とも書き、「松毬」は「ちちり」「ちちりん」とも訓読する。まつぼっくり松ぼくりともいう。これは、「松陰嚢(まつふぐり)」が転訛した語である。「松毛栗」は晩秋季語となっている[1]

英語の "pineapple" (パイナップル、パインアップル)は、本来は「松の果実」という名前の通り松かさのことであったが、後に松かさに似た別の果物、すなわち現在のパイナップルを指すようになった(この場合の“apple”は、リンゴではなく単に果実を意味する)[2]

構造

松かさと呼ばれるマツの球果は、被子植物子房が成熟してできる果実とは異なり、苞鱗と呼ばれる葉的器官と種子を含む種鱗とからなる鱗片が軸に螺旋状についてできている。

種子の成熟には2年かかるので、マツの枝を観察すると、先端に今年の雌花、1年枝の根元に昨年から成長した未熟な松かさ、更に下には種子を放出した後の松かさがついているのが確認できることがある。種子を放出してしばらくすると、松かさは枝からはずれて地上に落ちる。このとき、松かさは大きく開いてやや球形に近くなる。

一般に二・三葉マツ(Pinus 亜属)の球果は硬く卵型、五葉マツ(Strobus 亜属)のそれは軟らかくカプセル型で素手でも容易に分解できる傾向がある。ただし、Ducampopinus 亜属のものは五葉でも卵型で硬いものがあり、短枝を構成する葉の数と球果の形は完全には対応しない。

生態

アカマツやクロマツのようにによる種子散布を行う種においては、種子が成熟すると、松かさを構成する鱗片は反り返り、そのすき間を外に広げる。風散布性のマツの種子には「種子翼」という羽根状の付属物がついており、松かさから地上に落ちる間に風に乗って散らばる。

ハイマツチョウセンゴヨウのように動物による散布を行う種においては、種子が成熟しても松かさが開くことはなく、動物が種子を捕食する際に松かさごと運ばれてこぼれることで散布を行う。日本高山帯に分布するハイマツの散布者としてはホシガラスが重要である。チョウセンゴヨウはリスなどによる貯食に依存して種子散布を行っている。

また、松かさはにつけると鱗片を閉じ、逆に乾燥すると開く機構を持っている。これを利用して山火事に依存した種子散布を行う種もある。アメリカ合衆国ヨセミテ国立公園などに生えているコントルタマツPinus contorta: Lodgepole Pine)の松かさは火事になると裂開し、種子を地面に捲き散らす。この地域のように、山火事が多い地域では、それに適応した繁殖を行う植物も数多い。こぼれた種子は火事のあとの焼け野原で発芽し、森林再生する。逆に、火事が起きないとコントルタマツの松かさは開かないため、このヨセミテ国立公園では山火事も自然現象のひとつとして捉え、火事が起きても火を消さない。このような火災の熱で開く松かさは晩生球果(英語: serotinous cone)などと呼ばれ、マツ属の中でも Pinus 亜属のAustraleOocarpaeContortae の各亜節に含まれる一部の種に見られる。

文化・利用

アカマツやクロマツなどの松かさはその形が面白く、大きさも手頃で、よく保存されるので、子どものおもちゃなどによく用いられる。時には工芸品などに加工されることもある。水で濡らすとかさを閉じ、乾かすと再び開くという性質を生かし、かさが開いている状態では入らず、閉じていれば入るような大きさの口を持つ容器に入れることもある。

また、松脂を含み、燃えやすい形状のため、天然の着火剤としても優秀である。キャンプ用品の中には、松かさ1個から数個でシエラカップ1個分のお湯を沸かすキャンピングコンロも販売されている。

未成熟な状態の松かさは砂糖で煮付けてヴァレニエにされたりフランス料理のソースや酒の香り付けに使われるなど食用になる。また精油もとられる。成熟した松かさから得られる種子は松の実と呼ばれ、食用となる。

松かさ状の花序

被子植物ハンノキなどのカバノキ科の植物やモクマオウ科の植物などは松かさに似た花序をつける。いずれも楕円形で、多数の鱗片が螺旋状に並んだものをつけ、その鱗片が隙間を広げて種子散布すると、その全体が硬く乾燥して枯れ、落下する。

脚注

  1. ^ 齋藤愼爾・阿久根末忠編著『必携季語秀句用字用例辞典』柏書房、1997年、1056頁。ISBN 4-7601-1456-4 
  2. ^ pineapple”. etymonline. 2024年1月28日閲覧。
  3. ^ どんな味なの!?ロシア名物「松ぼっくりのジャム」が話題に 「想像できない」「実在したんですねぇ」|まいどなニュース”. まいどなニュース (2021年7月23日). 2023年8月29日閲覧。

参考文献

  • 茂木透写真「裸子植物」『樹に咲く花 合弁花・単子葉・裸子植物』高橋秀男・勝山輝男監修、山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、2001年、549-661頁。ISBN 4-635-07005-0 
  • 平野隆久写真、片桐啓子文『探して楽しむドングリと松ぼっくり』山と溪谷社〈森の休日〉、2001年、40-83頁。ISBN 4-635-06321-6 
  • 中山圭子『木の実の恐竜たち : マツボックリやドングリで作る不思議なおもしろクラフト』トンボ出版、2004年、12-15頁。ISBN 4-88716-149-2 

関連項目

外部リンク


「松ぼっくり」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「松ぼっくり」の関連用語



3
ちちり デジタル大辞泉
98% |||||


5
松子 デジタル大辞泉
74% |||||

6
松陰嚢 デジタル大辞泉
74% |||||



9
陰嚢 デジタル大辞泉
56% |||||


松ぼっくりのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



松ぼっくりのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの松かさ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS