期待値が定義されない理由
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/25 05:40 UTC 版)
「コーシー分布」の記事における「期待値が定義されない理由」の解説
コーシー分布の期待値は、 z = 1 γ ( x − x 0 ) {\displaystyle z={\frac {1}{\gamma }}(x-x_{0})} と置換すると E [ x ] = ∫ − ∞ ∞ x f ( x ) d x = ∫ − ∞ ∞ x 0 f ( x ) d x + ∫ − ∞ ∞ ( x − x 0 ) f ( x ) d x = x 0 + γ π ∫ − ∞ ∞ x − x 0 ( x − x 0 ) 2 + γ 2 d x = x 0 + lim R 1 , R 2 → ∞ γ π ∫ − R 1 R 2 z 1 + z 2 d z = x 0 + lim R 1 , R 2 → ∞ γ 2 π [ log ( 1 + z 2 ) ] − R 1 R 2 = x 0 + lim R 1 , R 2 → ∞ γ 2 π log ( 1 + R 2 2 1 + R 1 2 ) {\displaystyle {\begin{aligned}\operatorname {E} [x]&=\int _{-\infty }^{\infty }xf(x)\,dx=\int _{-\infty }^{\infty }x_{0}f(x)\,dx+\int _{-\infty }^{\infty }(x-x_{0})f(x)\,dx\\&=x_{0}+{\frac {\gamma }{\pi }}\int _{-\infty }^{\infty }{\frac {x-x_{0}}{(x-x_{0})^{2}+\gamma ^{2}}}\,dx\\&=x_{0}+\lim _{R_{1},R_{2}\to \infty }{\frac {\gamma }{\pi }}\int _{-R_{1}}^{R_{2}}{\frac {z}{1+z^{2}}}\,dz=x_{0}+\lim _{R_{1},R_{2}\to \infty }{\frac {\gamma }{2\pi }}\left[\log(1+z^{2})\right]_{-R_{1}}^{R_{2}}\\&=x_{0}+\lim _{R_{1},R_{2}\to \infty }{\frac {\gamma }{2\pi }}\log \left({\frac {1+{R_{2}}^{2}}{1+{R_{1}}^{2}}}\right)\end{aligned}}} となるが、この広義積分の値は存在せず(十分大きな R1, R2 について、 log ( ( 1 + R 2 2 ) / ( 1 + R 1 2 ) ) {\displaystyle \log \left((1+{R_{2}}^{2})/(1+{R_{1}}^{2})\right)} は ( − ∞ , ∞ ) {\displaystyle (-\infty ,\infty )} のどのような値でも取りうるので、二重極限としての収束値は存在しない)、このため期待値は存在しない。なお、コーシーの主値 lim R → ∞ ∫ − R R x f ( x ) d x {\displaystyle \lim _{R\to \infty }\int _{-R}^{R}xf(x)\,dx} は x0 である。 大数の強法則など、期待値に関する確率論のさまざまな結果は、このようなケースでは成立しない。 また、コーシー分布に従う母集団から無作為抽出された標本に関する算術平均は、ただ一つの抽出による結果からは一切改善されない。これは、標本に極端に大きな(あるいは小さな)値が含まれる可能性がかなり高いからである。しかし、標本中央値(これは極端な値には影響を受けない)は中心(最頻値)を知るための一つの尺度となりうる。
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