有糸分裂時の染色体の構造
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/28 09:16 UTC 版)
DNA複製の終了時点では姉妹染色分体はもつれたDNAとタンパク質からなる不定形の塊として互いに結合しており、各娘細胞へ分離することは事実上不可能である。この問題を避けるため、有糸分裂の開始によって複製されたゲノムの劇的な再組織化が開始される。姉妹染色分体のもつれはほどかれ、分割(resolution)される。染色体の長さも短くなり、染色体凝縮と呼ばれる過程で動物細胞では最大10,000倍にまで凝縮される。凝縮は前期に開始され、中期に染色体が紡錘体の中央部に整列するまでには最も小さな桿状構造となる。分裂期の染色体が核型分析で見られるような典型的なX型構造をとるののはこの時点であり、凝縮した各姉妹染色分体は全長にわたってコヒーシンによって連結され、多くの場合染色体の中心部に位置するセントロメアで結合している。 こうした動的な再構成はゲノムの正確で忠実な分離の保証に極めて重要であるが、分裂期の染色体の構造に関する我々の理解は未だ多くが不完全である。しかし、再構成に関与するいくつかの因子が同定されている。II型トポイソメラーゼ(英語版)はATPの加水分解を利用してDNAのもつれの脱連環反応(デカテネーション)を触媒し、姉妹染色分体の分割を促進する。コンデンシンは5つのサブユニットからなる複合体で、これもATP加水分解を利用して染色体凝縮を促進する。ツメガエル卵抽出液での実験では、リンカーヒストンH1(英語版)も分裂期の染色体の圧縮の重要な調節因子として示唆されている。
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