有機化合物中の結合長
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/14 17:10 UTC 版)
分子中の2つの原子の間の実際の結合長は、混成軌道や置換基の性質によって異なる。ダイヤモンド中の炭素-炭素結合の長さは154 pmで、通常の炭素の共有結合としては最も長い。 異常に長い結合長というのも存在する。その1つはトリシクロブタベンゼンで、結合長は160 pmにもなることが報告されている。さらにX線回折により、別のシクロブタベンゼンで174 pmというのが現在の最長記録である。 2つのテトラシアノエチレンジアニオン二量体の中に290 pmにも及ぶ非常に長いC-C結合が存在すると主張されているが、これは2電子4中心結合である。この型の結合は、中性のフェナレン二量体でも見られる。これらの結合は「パンケーキ結合」と呼ばれ、長さは305 pmにもなる。 平均的な炭素-炭素結合よりも短い結合も見られ、アルケンやアルキンではσ結合のs軌道成分が増えるため、結合長はそれぞれ、133 pm、120 pmとなる。ベンゼンでは、全ての結合が同じ結合長を持ち、139 pmである。s軌道成分の大きい炭素-炭素単結合としては、ジアセチレンの中央の結合(137 pm)やある種のテトラヘドラン二量体の中央の結合(144 pm)も顕著である。 プロパンニトリルでは、電子を欠いたシアノ基が結合長を短くする(144 pm)。歪みによってもC-C結合長は短くなる。In-メチルシクロファンと呼ばれる有機化合物では、トリプチセンとフェニル基の間の結合が147 pmと短くなる。In silicoの実験により、フラーレンに閉じ込められたネオペンタンは、結合長が136 pmと推定された The smallest theoretical CC single bond obtained in this study is 131 pm for a hypothetical tetrahedrane derivative.。この研究で、理論的に最短のCC結合は、仮想的なテトラヘドラン誘導体の131 pmである。 同じ研究で、エタンのCC結合を5 pm伸縮するのに、それぞれ2.8、3.5 kJ/molのエネルギーが必要であると推定された。また、同じ結合を15 pm伸縮するには、それぞれ21.9、37.7 kJ/mol必要であると推定された。 有機化合物の結合長C–H長さ (pm)C–C長さ (pm)多重結合長さ (pm)sp3–H 110 sp3–sp3 154 ベンゼン 140 sp2–H 109 sp3–sp2 150 アルケン 134 sp–H 108 sp2–sp2 147 アルキン 120 sp3–sp 146 アレン 130 sp2–sp 143 sp–sp 137
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