有機化合物の塩素化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/05 14:42 UTC 版)
有機合成化学における塩素化法として、塩素をアルケンなどに付加、あるいは水素を塩素原子で置き換える酸化的塩素化法と、ヒドロキシ基などの官能基を塩素原子に置換する置換塩素化法の2つが知られている。五塩化リンを用いた塩素化では、この両方のプロセスを経由可能である。 カルボン酸から対応するカルボン酸塩化物を生成させる際や、アルコールから塩化アルキルを生成させる際の塩素化剤として用いられる。しかし副生成物であるリン酸トリクロリドが除去しにくいことから、気体である二酸化硫黄を副生成物とする塩化チオニル、あるいは三酸化硫黄を副生成物とする塩化スルフリルの方が、研究室レベルではより一般的に用いられる。 R − OH + PCl 5 ⟶ R − Cl {\displaystyle {\ce {R-OH\ + PCl5 -> R-Cl}}} R − COOH + PCl 5 ⟶ R − COCl {\displaystyle {\ce {R-COOH\ + PCl5 -> R-COCl}}} またジメチルホルムアミド (DMF) などの第3級アミドとも反応し、ビルスマイヤー試薬 [ ( CH 3 ) 2 N = C ( Cl ) H ] Cl {\displaystyle {\ce {[(CH3)2N=C(Cl)H]Cl}}} (イミド酸塩化物)を生成する。他にリン酸トリクロリドとDMFの反応でもビルスマイヤー試薬が生成する。これらの反応試剤はベンズアルデヒド誘導体の合成やヒドロキシ基の塩素化に用いられる。 三塩化リンとは異なり、五塩化リンはアリル位やベンジル位の炭素-水素結合を置換したり、C=O 基を CCl2 基に置換したりするのに用いられる。 五塩化リンの求電子的な性質を利用して、スチレンと五塩化リンとの反応に続く加水分解により、ホスホン酸誘導体を合成する手法が知られている。 スルホン酸塩を塩化スルフリルに変える際も、五塩化リンが用いられる。 RSO 3 Na + PCl 5 ⟶ RSO 2 Cl {\displaystyle {\ce {RSO3Na\ + PCl5 -> RSO2Cl}}}
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