時計の「ムーンフェイズ」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/22 18:50 UTC 版)
「腕時計#複雑腕時計」も参照 腕時計や懐中時計の中には「月相を表示する小窓」を装備しているものがあり、「ムーンフェイズ」と呼ばれる。 古典的な機構としては、両側に月の絵を二つ描いた円盤を59日周期で1回転させ、半円形を組み合わせた小窓によって円盤の約半分を表示して残りを隠す巧妙な機構になっている。つまり円盤が1周する間に平均朔望月の約29.530589日周期に近似した29.5日周期で(旧暦)2朔望月分の月相を表現している。そのため、平均朔望月にかなり近いとはいえ、29.5日周期では約965日に1日の割合で腕時計の方が早くなってしまう。 超高精度な機構を持つものでは、IWCのポルトギーゼで577年に1日の誤差のモデルやH.モーザーのエンデバー・ムーン(約1027.3年に1日の誤差)などが存在する。これらは歯車の歯数を増やすことで高精度化を実現している。 実際の月相は、月を楕円弧状に光と影の部分に分けるが、「ムーンフェイズ」は月食と同様に円を円で隠すことで月相を表現している。月相0付近ではあまり違和感がないが、それ以外では実際の月相と「ムーンフェイズ」が表示する月相の形状は大きく異なる。この問題を解決する方法としては、月の円盤を小窓ではなく時分針と同じ軸で回転させ、カージオイド型の円盤で隠す方法(ル・ローヌ(スイス)のヘドニア・ムーンフェイズ、Ochs und junior(スイス)のムーンフェイズモデルなど)、そして半分を黒く塗った球体を横に回転させる方法(アーノルド&サンの「ルナ・マグナ」など)がある。ただし、これらは1朔望月で一回転させる必要があるうえ、構造が複雑になって厚みが増えるなどの問題があり、まだ一般的ではない。 ちなみに、廉価な腕時計の中には「ムーンフェイズ」に似せた「デイアンドナイト」という小窓を装備しているものがあるが、これは1日周期で1回転する円盤を半円形の小窓で半分隠している単純な機構であり、実用性も午前と午後を確認する程度しかない。
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