情報の二相理論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/16 02:28 UTC 版)
「デイヴィッド・チャーマーズ」の記事における「情報の二相理論」の解説
そして以上二点の原則についての考察から、重要であろうものとして情報に注目する。そこから情報の二相説(double-aspect theory of information)を可能性として提唱する。これは実在に関する形而上学的立場で、世界の究極的な実在(Ultimate reality)を情報(information)とし、その情報が物理的な性質と現象的な性質を持つのではないか、とする立場。 この立場は心身問題の伝統の中で中立一元論(または性質二元論)と呼ばれる立場にあたる。中立一元論とは世界の究極的な実在として、物理的でも心的でもない、何か別のものを考える立場である。チャーマーズはそうした何か別のものとして、情報を考えている。 情報という言葉は、広い範囲の意味をもつが、チャーマーズは情報の定義として、グレゴリー・ベイトソンの「違いを生む違い」(a difference which makes a difference)を引く。 情報を究極的な実在とするアイデアは、物理学者ジョン・アーチボルト・ウィーラーの哲学に大きい影響を受けている。ウィーラーは量子力学に関する考察の中から、世界の究極的な実在を情報と考え、それを "it from bit"(それはビットから)という標語であらわした。 チャーマーズは、情報を外側から見ると物理的、内側から見ると現象的、とする。 つまりビット列のようなもので構成された抽象的な情報空間がまずあり、そこから物理的状態および現象的状態が、それぞれ実現されているのではないかという形而上学。この形而上学を一つの参考としつつ精神物理法則を模索すべきでないかとする。この考え方の利点の一つは、情報空間が共通項として存在するため、物理状態と現象的状態の間での直接の因果関係を仮定せずとも、物理状態と意識との連動を説明できる点である。
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