彈棋とは? わかりやすく解説

た‐ぎ【弾棋/碁】

読み方:たぎ

「たんぎ(弾棋)」の撥音無表記。

「碁双六の盤、調度、—の具など」〈源・須磨


だん‐ぎ【弾棋/弾碁】

読み方:だんぎ

《「たんぎ」とも》遊戯の一。四角中高の盤の両方に6個または8個の白黒の石を並べ対座し二人交互にその石をはじいて相手の石に当たれば取り、当たらなければ取られる。指石。いしはじき。たぎ。


弾棋

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/12 07:04 UTC 版)

弾棋

弾棋(だんぎ、たんぎ、だんき)は、中国古代の遊戯であり、漢代から唐代まで遊ばれた。「弾棊・弾碁」とも書く。その名の示すとおり、駒を盤上ではじいて、その技能を争うものであったようだ。

多くの文献で言及されているが、そのルールには不明な点が多い。

ルール

弾棋のルールをある程度具体的に記したものには、邯鄲淳『芸経』[1]と、唐の柳宗元「序棋」[2]があるが、両者はかなり異なっている。時代によってルールが異なるのかもしれない。

『芸経』などによると、弾棋は2人で遊ぶゲームで、石でできた盤と木製(または象牙[3])の駒を使った。盤は中央がまるく盛りあがっており、四辺が低くなっていた。駒はひとり6枚で、交代に駒をはじいた。

柳宗元によると、弾棋の盤は木製で、中央は丸く高くなっており、24個(おそらくひとり12個)の駒を下に置く。駒は上下2種類が朱墨で色分けされており、下の駒は2個で駒1個を取れるようになっていた。

歴史

3世紀傅玄「弾棋賦序」によると、前漢成帝蹴鞠を好んでいたが、劉向が蹴鞠は疲れるので皇帝のやるべきものではないとして止めた。そこで成帝は蹴鞠に似たルールの弾棋を考案したという[4]。『西京雑記』も同様の話を載せるが、考案者を劉向とする[5]。著者不明の『弾棋経』にも似た話を載せるが、武帝東方朔の話にすりかわっている[6]

後漢では楽成王劉萇(章帝の孫)が親の服喪期間中に弾棋をしていたとして批判されている[7]。また梁冀が弾棋を好んだという[8]蔡邕は「弾棋賦」を作った[9]王粲も「弾棋賦」を書いている[10]

それまで「棋」とは六博を意味していたが、後漢時代に六博が廃れると弾棋を意味するようになった。

三国時代では曹丕が弾棋の名手として知られ[4]、自ら「弾棋賦」を作り[11]、『典論』自叙にもそのことが記されている[12]。『文選』巻42に載せる「与朝歌令呉質書」には「弾碁間設、終以六博」の句がある。なお曹丕に殺された丁廙(丁儀の弟)も「弾棋賦」を書いている[11]

晋代にも盛んに行われ、『抱朴子』では樗蒲・弾棋にうつつをぬかすことを堕落した生活の代表として批判する[13]。上記の傅玄のほか、夏侯湛も「弾棋賦」を作り[11]徐広には『弾棋譜』という著書があったらしい[14](なお、『重較説郛』に徐広『弾棋経』を収録しているが、『隋書』より後の目録にこの書物は見えていないので、おそらく徐広の作ではない[15])。後趙石遵は殺されるときに婦人と弾棋をしていたという[16]

南北朝時代では南朝宋の杜道鞠が弾棋の名人として知られる[17]。また、南朝梁簡文帝の「弾棋論序」と元帝の「謝東宮賜弾棋局啓」という文が『芸文類聚』に引かれている[11]

唐代には弾棋はしばしば詩によまれた[18]

北宋のはじめに太宗が弾棋を学んだという記録が見える[19]沈括夢渓筆談』では唐代に書かれた『譜』や自分の見た盤に従って弾棋の説明を行っているが、沈括当時にはこのゲームを行う人はほとんどいないと言っている[20]

弾棋が廃れると、「棋」は囲碁を意味するようになった。

韓国では「アルカギ(알까기)」という普通の碁盤上で碁石を弾くゲームがある。

日本

日本では『和名類聚抄』雑芸類に「弾碁」を載せるものの読みを記さず、漢字音でそのまま呼んだらしい。『源氏物語』などには「たぎ」の名で見え、少なくとも当時は実際に宮中で遊ばれたことや、専用の盤があったことがわかる。

徒然草』171段には碁盤の上で石をはじくゲームの話があるが、弾棋と関係があるかどうかわからない[21]

和漢三才図会』では「弾碁」を「はじき」と読み、おはじきの様子を描いている(盤はない)。すでに何だかわからなくなっていたらしい。

江戸時代の長野美波留『徴古図録』に東大寺所蔵の弾棋盤の図を記す(この図は『古事類苑』にも引かれている)[22][23]切妻屋根のように中央が高くなっており、側面の低くなったところに12のマス目が描いてあるが、これは中国の文献が記すところとかなり異なる。『嬉遊笑覧』もこれを弾棋盤と判断している。正倉院では双六盤と呼ばれているが、今でも弾棋盤ではないかという説もある[24][25]増川宏一はこの説を疑問とし、やはり双六盤だろうとする[26]

脚注

  1. ^ 文選』巻42の曹丕「与朝歌令呉質書」の注、および『後漢書梁冀伝の注に引く
  2. ^ 柳宗元序棋」『柳河東集』 巻24https://archive.org/stream/06081824.cn#page/n26/mode/2up 
  3. ^ 後述の蔡邕「弾棋賦」に「列象棋」とある
  4. ^ a b 世説新語』 巧芸http://ctext.org/library.pl?if=gb&file=77821&page=64。"弾棋始自魏宮内、用妝奩戯(傅玄「弾棋賦叙」曰「漢成帝好蹴鞠。劉向以請労人体・竭人力、非至尊所宜。御乃因其体作弾棋。今観其道、蹴鞠道也。」(注後略))。文帝於此戯特妙、用手巾角払之、無不中。"。 
  5. ^ 『西京雑記』「成帝好蹴鞠。群臣以蹴鞠為労体、非至尊所宜。帝曰「朕好之。可択似而不労者、奏之。」家君作弾棋、以献。帝大悦、賜青羔裘・紫絲履、服以朝覲。」
  6. ^ 『太平御覧』巻755・工芸部12・弾棋の引く『弾棋経』序
  7. ^ 『太平御覧』巻755・工芸部12・弾棋「『東観漢記』曰:安帝詔曰「楽成王居諒闇、衰服在身、弾棋為戯、不肯謁陵。」」
  8. ^ 『後漢書』梁統伝「冀(中略)性嗜酒、能挽満・弾棋格五六博蹴鞠・意銭之戯。」
  9. ^ 『芸文類聚』巻74・巧芸部・弾棋および『太平御覧』巻755・工芸部12・弾棋に異なる部分が引用されている
  10. ^ 『太平御覧』巻755・工芸部12・弾棋
  11. ^ a b c d 『芸文類聚』巻74・巧芸部・弾棋
  12. ^ 『三国志』魏書・文帝紀注「『典論』帝自叙曰:(中略)余於他戯弄之事少所喜、唯弾棋略尽其巧、少為之賦。昔京師先工有馬合郷侯・東方安世・張公子。常恨不得与彼数子者対。」
  13. ^ 『抱朴子』外篇・疾謬「暑夏之月、露首袒体。盛務唯在樗蒲・弾棋、所論極於声色之間、挙足不離綺繻紈袴之側、游歩不去勢利酒客之門。」
  14. ^ 『隋書』経籍志三「『弾棋譜』一巻、徐広撰。」
  15. ^ 徐広「弾碁経」『説郛』 巻102https://archive.org/stream/06069905.cn#page/n98/mode/2up 四庫全書本)
  16. ^ 『晋書』載記7・石遵遂劫李農及右衛王基、密謀廃遵。(中略)遵時方与婦人弾棋。」
  17. ^ 『南史』張邵伝宋文帝云「天下有五絶、而皆出銭唐。」謂杜道鞠弾棋・范悦詩・褚欣遠模書・褚胤囲棋・徐道度療疾也。」
  18. ^ 下の『夢渓筆談』に引用されているものは、白居易「和春深二十首」其十七、李商隠「柳枝五首」其二
  19. ^ 江少虞『皇朝類苑(元和古活字本)』 巻52・弾碁、1621年https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2543882/97。"太平興国中、宣問能者進局并碁子。上習未久而極其妙焉。(見賛寧要言)"。 
  20. ^ 沈括『夢渓筆談』・技芸「弾棋今人罕為之。有譜一巻、尽唐人所為。其局方二尺、中心高如覆盂。其巓為小壺、四角微隆起。今大名開元寺仏殿上有一石局、亦唐時物也。李商隠詩曰「玉作弾棋局、中心最不平。」謂其中高也。白楽天詩「弾棋局上事、最妙是長斜。」長斜謂抹角斜弾、一発過半局。今譜中具有此法。柳子厚「叙棋」用二十四棋者、即此戯也。『漢書』注云「両人対局。白黒子各六枚。」與子厚所記小異。」
  21. ^ 徒然草』 171段http://jti.lib.virginia.edu/japanese/tsure/YosTsur.html。"棊盤の隅に、石をたててはじくに、むかひなる石をまぼりてはじくは当らず。我が手許をよく見て、こゝなるひじりめをすぐにはじけば、たてたる石必ず当る。"。 
  22. ^ 長野美波留『徴古図録https://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/ri11/ri11_00370/ri11_00370_p0017.jpg 
  23. ^ 古事類苑』 遊戯部一、神宮司庁、127頁https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/897887/70 
  24. ^ 木画螺鈿双六局 第1号正倉院http://shosoin.kunaicho.go.jp/ja-JP/Treasure?id=0000012217 
  25. ^ 榧双六局 第4号正倉院http://shosoin.kunaicho.go.jp/ja-JP/Treasure?id=0000012220 
  26. ^ 増川宏一『盤上遊戯の世界史』平凡社、2010年、254-256頁。ISBN 9784582468137 


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