少しだけ非自明な例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/11 14:00 UTC 版)
集合 Z4 を数 0, 1, 2, 3 からなる集合とし、後に述べるような加法と乗法を定めるものとする(任意の整数 x に対して、それを 4 で割った余り x mod 4 の成す剰余類環)。 任意の x, y ∈ Z4 に対して x + y は、それを整数とみての和の mod 4。従って Z4 の加法構造は、下に掲げた表の左側のようになる。 任意の x, y ∈ Z4 に対して x ⋅ y は、それを整数とみての積の mod 4。従って Z4 の乗法構造は、下に掲げた表の右側のようになる。 ·012300 0 0 0 10 1 2 3 20 2 0 2 30 3 2 1 +012300 1 2 3 11 2 3 0 22 3 0 1 33 0 1 2 この Z4 がこれらの演算に関して環を成すことは簡単に確認できる(特に興味を引く点はない)。まずは、Z4 が加法に関して閉じていることは表を見れば(0, 1, 2, 3 以外の元は出てこないから)明らかである。Z4 における加法の結合性と可換性は整数全体の成す環 Z の性質から導かれる(可換性については、表の主対角線に対する対称性からも一見して直ちにわかる)。0 が零元となることも表から明らかである。任意の元 x のマイナス元が常に存在することも、それを整数とみての (4 - x) mod 4 が所要のマイナス元であることからわかる(もちろん表を見ても確かめられる)。故に Z4 は加法の下でアーベル群になる。同様に Z4 が乗法に関して閉じていることも右側の表からわかり、Z4 における乗法の結合性は(可換性も)Z のそれから従い、1 が単位元を成すことも表を見れば直ちに確かめられる。故に Z4 は乗法の下モノイドを成す。Z4 において乗法が加法の上に分配的であることは、Z におけるそれから従う。まとめれば、確かに Z4 が与えられた演算に関して環を成すことがわかる。 Z4 の環としての性質 整数の乗法においては、二整数 x, y の積が xy = 0 を満たすならば x = 0 または y = 0 が成り立つが、環 (Z4, +, ⋅) では必ずしもそれは成立せず、例えば 2 ⋅ 2 = 0 が各因数が 0 ではないにもかかわらず成り立つ。一般に、環 (R, +, ⋅) の非零元 a が (R, +, ⋅) における零因子であるとは、R の非零元 b で ab = 0 を満たすものが存在するときに言う。環 Z4 においては 2 が唯一の零因子である(なお、0 を零因子と扱うこともあることに注意)。 零因子を持たない可換環は整域と呼ばれる(後述)。故に整数全体の成す環 Z は整域であり、一方 Z4 は整域ではない環である。
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