導来関手
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/06 05:13 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動数学では、一部の関手から導来 (どうらい、英語: derived) することにより、元の関手と密接に関連した新しい関手を得ることができる。導来という操作は、抽象的ではあるが、数学全体を通して多くの構成を統一する。
動機
さまざまな状況で短完全系列が長完全系列に持ち上がることが分かっている。導来関手の概念はこれらの結果の多くを明確に根拠づけることができる。
2つのアーベル圏 A と B の間の共変な左完全関手 F : A → B が与えられ、0 → A → B → C → 0 を A の短完全系列とすると、F を適用することで完全系列 0 → F(A) → F(B) → F(C) が得られる。この系列をどのように右へ拡張し長完全系列とするかが問題になるが、与えられた短完全系列を右へ拡張する方法には多数の異なる方法があるので、厳密には、この問は適切とは言えない。しかし、A が充分に「良い」性質を持っている場合は、F の右導来関手による標準形がひとつ存在する。全ての i ≥ 1 に対して、関手 RiF: A → B が存在して、上記の短完全系列は次のように右へと拡張される。
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第二に、η: F → G を左完全関手 F から左完全関手 G への自然変換とすると、自然変換 Riη: RiF → RiG が引き起こされ、実際、引き起こされた Ri は A から B へのすべての左完全関手からなる関手圏 (functor category) から、A から B へのすべての関手の関手圏への関手となる。さらに、この関手は、次の意味で長完全系列と整合性をもっている。
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が引き起こされる。
これらの自然性は両方とも、蛇の補題によりもたらされる系列の自然性から来る。
逆に、次の導来関手の特徴づけが成り立つ。A のすべての単射的対象 I とすべての正の整数 i に対して Ri (I) = 0 が成り立つような、上記を満たす関手の族 Ri: A → B、つまり、短完全系列を長完全系列へ写すものが与えられると、それらの関手は R0 の右導来関手である。
一般化
より現代的な(より一般的な)導来関手のアプローチは導来圏のことばで扱われる。
文献
- Manin, Yuri Ivanovich; Gelfand, Sergei I. (2003), Methods of Homological Algebra, Berlin, New York: Springer-Verlag, ISBN 978-3-540-43583-9
- Weibel, Charles A. (1994), An introduction to homological algebra, Cambridge Studies in Advanced Mathematics, 38, Cambridge University Press, ISBN 978-0-521-55987-4, OCLC 36131259, MR 1269324
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導来関手
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/30 06:56 UTC 版)
詳細は「導来関手」を参照 2つのアーベル圏 A と B の間に共変左完全関手 F : A → B が与えられているとしよう。0 → A → B → C → 0 が A における短完全列であれば、F を施すことで完全列 0 → F(A) → F(B) → F(C) を得、次のことを疑問に思うだろう。この列を右に続けて長完全列にするにはどうすればいいだろうか。厳密に言えば、これは不良設定問題である。なぜならば与えられた完全列を右に続けるたくさんの異なる方法が常に存在するからである。しかし、(A が十分 "nice" であれば)それを行う1つのカノニカルな(英語版)方法が存在し、それは F の右導来関手によって与えられる、ということがわかる。すべての i≥1 に対して、関手 RiF: A → B が存在し、上記の列は以下のように続く。0 → F(A) → F(B) → F(C) → R1F(A) → R1F(B) → R1F(C) → R2F(A) → R2F(B) → ... . これから F が完全関手であることと R1F = 0 であることが同値であることがわかる。なのである意味 F の右導来関手は F が完全であることから「どの程度離れているか」を測る。
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