宮田新手と91手定跡
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/08 10:09 UTC 版)
△7三角待機型にはすぐに仕掛けるのも穴熊にするのも面白くないことが分かり、手待ちをするなど先手は苦戦していたが、2002年に△2四銀-8五歩-7三角型には▲2五桂に変えて▲6五歩と突く宮田新手が現れて、態勢を立て直した。△7三角とされた後でも▲6五歩と突き、後手の理想形からわざと一手指させてそれを崩すのが目的で、他にも▲6四歩の突き捨てや▲6六角と据えるなどの手も見ている。▲6五歩にはすぐ△6四歩の反発が気になるが、8五まで歩が伸びていないので成立しない。このため▲6五歩で△8五歩としても、以下▲2五桂△4五歩▲同銀△1九角成▲4六角△同馬▲同歩△5九角の際に▲6六角が生じており、このとき後手が歩切れなので△4四歩と打てなくなっており、△3三桂は▲3五歩、△1二玉は▲1五歩からの攻めが効く。 このため、△4五歩からの反発を回避して、△4二銀とすると今度は▲3五歩△同銀▲同銀△同歩から▲1五歩の攻めが生じることになる。▲1五歩△同歩に▲6四歩が宮田新手のもう一つの狙いで、▲同角で角を近づけておくと、▲3五飛と飛車を走って▲6五飛と展開する手が生まれる。次に▲1五香△同香▲6四飛△同歩▲1三角打△1二玉に▲4一銀がある。このため後手は▲3五飛に△2四銀と打ち、▲6五飛△7三桂▲6六飛に△9六歩▲同歩△9七歩で、▲9七同香なら△同角成から△6四香で飛車を殺す狙いを見せるが、先手が▲1二歩と叩く手が生じ、△同香▲7五歩△8六歩▲7四歩△8五桂▲7三歩成が一つの手順。こうして今度は△8五歩が見直され、その際の先手▲9八香の対策にはその瞬間か▲9九玉とさせて△6四角と手損に出るという手段を生む。 一方で、▲3五歩△同銀▲同銀△同歩から▲1五歩のときに後手から△3七銀と打って抑えこむ指し方も生じた。以下▲3九飛に△1五歩と戻して▲6四歩に△同角という手段で後手が連戦連勝となった。 この後羽生善治が渡辺明相手に第60回NHK杯戦準決勝で△1五歩に▲6四歩 △同 角 ▲1五香とし、以下△同 香 ▲6五銀 △2六銀成 ▲6四銀 △同 歩▲3五飛 △2四銀に、▲1三桂成 △同 桂 ▲1四歩として快勝する。 第61回NHK杯決勝でも同じカードで先手の羽生が▲1四歩以下は△3五銀に▲同角で以下△1二歩にすぐ▲1三歩成とし、以下△同 歩 ▲7一角 △2五成銀に、▲4四角上 △同 金 ▲同角成 の順でまた勝利した。このとき▲同角成で後手の△3三銀に先手は馬を逃げていたが、2012年の第71期A級順位戦、屋敷伸之対渡辺明戦で先手が逃げずに▲3四桂とし、以下△1二玉 ▲3三馬 △同 金 ▲2二金 △同 飛 ▲同桂成 △同 玉▲8二飛 △3二歩 ▲8一飛成となった。ここまで初手▲7六歩から、図4と宮田新手▲6五歩を経由して91手に及び、91手組と呼ばれる長大な定跡が誕生するまでになる。
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