定義と語源
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 13:33 UTC 版)
微生物叢は、生きた微生物集団の全体を指す用語であり、また微生物集団が有する遺伝情報の全体を指してマイクロバイオーム (microbiome) と呼ばれることもある。また、マイクロバイオームは微生物叢の遺伝情報のみならず、その集団が置かれる環境の状態も含有する。従来は微生物叢を意味する用語として、生態学において叢(くさむら、多くのものが集まっている)を意味する用語であるフローラ(flora)の語が用いられてきたが、マイクロバイオーム解析の興隆と共に微生物叢 (microbiota) が支配的に用いられるようになった。歴史的な背景によってフローラの語は用いられてきたが、現代において学術的に微生物叢を表す単語としてフローラを用いるべきではないと言われている。また、微生物叢研究はメタゲノム解析と呼ばれる解析技術によって発展してきた。メタゲノムとはギリシャ語で「高次」や「超越」を意味する「メタ」と、すべての遺伝子全体を意味する「ゲノム」を組み合わせた造語である。メタゲノム解析においては微生物群集の遺伝子全体を、DNAの混合物として培養を行わずに網羅的に解析する。微生物が細菌、古細菌、真菌、蠕虫などの寄生虫、及びウイルスを内包するように、微生物叢もまた細菌をはじめとした様々な微生物によって構成される。一方で、微生物叢の研究の多くは腸内細菌をはじめとした細菌に焦点を当てており、マイクロバイオームが常在細菌と同義的に用いられることもある。ヒト微生物叢の遺伝情報はヒトそのものの遺伝情報よりも大規模であり、それ故に「第二のゲノム」と称されることもある。
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