娘たちの結婚
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/25 16:55 UTC 版)
テュンダレオースの娘たちのうち、クリュタイムネーストラーはミュケーナイの王アガメムノーンと結婚し、ティーマンドラーはテゲアーの王エケモスと結婚した。幼いころから絶世の美女として名高いヘレネーにはギリシア全土から多くの求婚者が集まった。求婚者たちを見たテュンダレオースは彼らの中からただ1人を夫として選んだならば、他の求婚者が怒りはしまいかと心配した。テュンダレオースが頭を悩ませていると、イタケー島の王で、知略に長けたオデュッセウスが妙案を授ける代わりにイーカリオスの娘ペーネロペーとの結婚を取り持ってほしいと持ち掛けてきた。そこでテュンダレオースは承諾し、オデュッセウスの案に従って、選ばれた婿がもし何者かによって損害を被ったときは、他の求婚者はみなで協力して婿を助けることを誓わせた。そしてその後でメネラーオスをヘレネーの夫に選び、オデュッセウスの結婚に協力してやった。 ヒュギーヌスによれば、テュンダレオースはヘレネーの求婚者たちを見て、アガメムノーンがクリュタイムネーストラーを離縁したり、また何らかの騒動が起こることを恐れて、オデュッセウスの勧めに従ったとしている。また結婚相手の選定はヘレネー自身に行わせた。すなわちヘレネーに冠を持たせ、結婚したい相手の頭に載せるように言うと、ヘレネーはメネラーオスを夫に選んだ。 なお、パウサニアスは求婚者たちの誓いに関して風変わりな伝承を伝えている。スパルタからアルカディア地方に向かう道の途上に《馬の墓》と呼ばれる場所があり、テュンダレオースはこの場所で供儀に用いた馬の肉片を並べ置いて、その上で求婚者たちに誓約をさせたという。 しかしテュンダレオースの娘たちの結婚はみな不幸な結末を迎えた。エウリーピデースは悲劇『オレステース』で「テュンダレオースはギリシア中の非難の種にと悪名ばかり高い娘を生んだ」と述べたが、同箇所に付された古註はステーシコロスの詩について触れ、テュンダレオースは神々を供儀したときにアプロディーテーにのみ生贄を捧げることを忘れたため、アプロディーテーは怒り、テュンダレオースの娘たちを何度も結婚する女や夫を裏切る女にしたと述べている。さらに古註はヘーシオドスの『名婦列伝』を引用している。それによるとアプロディーテーが彼女たちに悪評が生まれるように仕向けた結果、ティーマンドラーは夫エケモスを捨ててドゥーリキオンの王ピューレウスのもとに行き、クリュタイムネーストラーはアガメムノーンを捨ててアイギストスと関係を持ち、ヘレネーもまたメネラーオスを裏切った。すなわちヘレネーはトローイアの王子パリスに誘惑されて家族を捨てたため、かつての求婚者たちはヘレネーを取り戻したいと考えるメネラーオスとアガメムノーンに協力してトローイアに遠征することになった。こうしてヘレネーはトロイア戦争の原因となった。
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