命名の先取権
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/17 01:44 UTC 版)
同一の種に別々の人物が異なる学名を命名して記載論文を発表した場合、原則として先に発表された学名が有効となる。逆に、別々の種に同じ学名が命名されてしまった場合にも、原則として先に発表された学名が有効となる。これを先取権の原則という。同一の種が異なる名を持つことはシノニム(異名・同物異名)、別の種が同じ名を持つことはホモニム(同名・異物同名)と呼ばれる。 ただし、先に発表されていた学名が、長い年月のあいだ誰にも気づかれることなく使用されず、その後に発表された学名のほうが広く知れわたっていて長く使用されていたと判明することもありうる。このような場合、学名の変更はその生物にかかわりのある分野へ大きな混乱を及ぼすおそれがある。これを避けるための措置が命名規約に明記されている。動物の場合、一定の手続きに従って審査を受け、それが受理されれば、先に発表された学名を遺失名として扱い、後から発表された学名をこれまでどおりに使用することができる。遺失名の決定は、動物命名法国際審議会の強権発動によってのみ行われる。植物の場合、その可能性がある学名をあらかじめリストアップして対処している。 本来、ホモニム(同名)は先取権の原則や規約の規定により必ず回避されなければならないが、動物、藻類・菌類・植物、原核生物の3つの命名規約は互いに独立しているため、界を越えたホモニム(ヘミホモニム)は今のところ規制する事ができない。実際に、属レベルでは植物と動物に同名属の存在が数例知られている。潜在的なヘミホモニムを収集したデータベースが存在する。
※この「命名の先取権」の解説は、「学名」の解説の一部です。
「命名の先取権」を含む「学名」の記事については、「学名」の概要を参照ください。
- 命名の先取権のページへのリンク