同一性保持権との関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/09/30 00:52 UTC 版)
ライセンスの中には、著作物の翻案を許諾するものが存在するが、著作者人格権との関係で問題が生じ得る。 GFDLを例にすると、アメリカ合衆国著作権法を前提として考え出されたライセンスであるため、他の法域の著作権法制との整合性は考慮されていない。そのため、他の国の著作権法の下で、GFDLが想定するようなコピーレフトなライセンスが実現できるかという問題が存在する。特に問題となるのは、著作者人格権の中の同一性保持権の扱いである。 アメリカ合衆国著作権法は、著作者人格権の保護を明記しているベルヌ条約に加盟しているにもかかわらず、他国の著作権法制とは異なり、著作者人格権を保護する旨の規定が視覚芸術著作物に限定されている (合衆国法典第17編第106A条)。そのようなこともあり、氏名表示権に関連した条項はあるものの、GFDLにも著作者人格権の扱いについて定めた条項が存在しない。 しかし、他国の著作権法では、ベルヌ条約の要請から著作者人格権を保護する法制を採用しているため、GFDLに従う形で著作物を翻案したとしても、著作者人格権たる同一性保持権との関係でコピーレフトなライセンスの実現ができるのかという疑問が生じることになる。 特に、著作者と著作権者が分離した場合に、問題が深刻になる。著作権は譲渡できるのに対し、著作者人格権は一身専属性を有するために譲渡が不可能とされているため、著作権を著作者から譲り受けた者が当該著作物につき GFDLを適用することができるのか、できたとしても著作者の有する同一性保持権を侵害する形での改変は認められるのかという問題が解決していない。 また、著作者と著作権者が同じ人であるとしても、GFDLにより同一性保持権の不行使宣言をしたものとして、それを有効とみなすことができるかという問題がある。特に、日本の著作権法の解釈としては、著作者人格権の放棄はできないと解されることもあるため、やはり有効なライセンスとして扱うことができるのかという問題が生じることになる。 上記の問題は、GFDL以外にも、翻案の許諾条項を含むライセンスに妥当する。
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