反応機構の推定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/15 23:09 UTC 版)
「速度論的同位体効果」の記事における「反応機構の推定」の解説
速度論的同位体効果は、反応機構の解析に用いることができる。 例えば以下のような、ベンゼンの全ての水素原子を重水素で置換した重ベンゼンとベンゼンのニトロ化の反応速度定数を比較すると、 k H / k D = 1 {\displaystyle k_{H}/k_{D}=1} となる。 C 6 H 6 + NO 2 + → k H C 6 H 5 NO 2 + H + {\displaystyle {\ce {C6H6\ + NO2^+ ->[k_H] C6H5NO2\ + H^+}}} C 6 D 6 + NO 2 + → k D C 6 D 5 NO 2 + D + {\displaystyle {\ce {C6D6\ + NO2^+ ->[k_D] C6D5NO2\ + D^+}}} これは、ベンゼンのニトロ化反応においてC-H結合の切断が律速段階に関わらないことを示している。実際この事実は以下のように、ベンゼンのニトロ化がニトロニウムイオンの付加と水素原子の脱離の二つの反応段階によって構成されており、うちニトロニウムイオンの付加が律速段階であることと一致する。 このように特定の部位の元素を同位体に置換し、反応速度係数を比較することで律速段階を推測することができる。また、水素を重水素に置換した場合については、 k H / k D {\displaystyle k_{H}/k_{D}} の大きさを見ることにより遷移状態の構造についても知ることができる。
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