原産地での消滅
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/06 13:59 UTC 版)
カルメネールはヨーロッパ系ブドウ品種の中でも最古のもののひとつであり、他の有名な品種よりも古くから存在すると考えられている。中には「長い時間をかけて確立されたカベルネ・ソーヴィニヨンのクローン」であると考える者もいる。カルメネールという名前は、もともとはヴィドゥという品種の別名である可能性がある。ヴィドゥはボルドー固有のカベルネ・ソーヴィニヨンのクローンであり、かつてはボルドーで栽培される全ての黒ブドウの起源であると考えられていた品種である。さらに、カルメネールは、古代ローマにおいて賞賛され、その時代におけるボルドーの街の名前で知られていたビチュリカと同一視できるという示唆も存在している。この古代品種は、大プリニウスの著作によればイベリア半島原産であるということだが、実際は現在トスカーナでサンジョベーゼとのブレンドによく使われる品種がプレディカート・ディ・ビチュリカと呼ばれている。カルメネールはフランス・ボルドーのメドック原産と知られており、グラーヴにおいてもうどんこ病の被害が蔓延するまでは広く栽培されていた。現在においては、フランスではカルメネールはほぼ見られない。これは1867年のフィロキセラ禍によりヨーロッパのブドウ畑が壊滅的な状況となり、カルメネールも大きな被害を受けたためであり、その後長きにわたりこの品種は絶滅したと思われていた。ブドウ畑を再建するときにも、ほぼ入手が不可能であり、栽培も他のボルドー系品種に比べ難しいカルメネールを再び植えることはなされなかった。この地域は、春に湿度が高く寒冷な気候であるため、花ぶるい(地域の気候がその品種のブドウにとってぎりぎりの気候条件で、寒冷かつ湿潤な気候であるとき、開花後の結実が阻害される現象)が発生しやすい。収量は多品種より少なく、健全な果実を収穫することも容易ではない。そのため生産者は、植え替えの際により多産で花ぶるいの影響を受けにくいブドウ品種を選ぶことになり、カルメネールは徐々に姿を消してきた。
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